ゴルフな人々    (イラストレーター渡辺隆司のブログ)

ゴルフが人生に似てるのか、人生がゴルフに似てるのか... 忘れ得ぬ、ゴルフで出会った人々。

ゴルフ人生で、触れ合いすれ違った人達の、忘れられぬ想いを描き残しておきます。

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拝啓..なんて、堅苦しく書くのはやめておこう。
俺が先に18番をホールアウトした、というだけのことだ。

お前が先に始めたゴルフを、あとから始めた俺がすぐに追いついたことは、今でも悪いことをしたと思っている。
頭に来たお前が、俺に永久スクラッチで握り続けることを申し込んで来た時に、受け入れたことも悪いことをしたと思っている。
俺の方がいつもお前より10ヤード以上飛ばしていたのも、悪かったと思っている。

おかげで俺はお前から勝ち逃げすることになってしまったし、お前が俺の何倍もドライバーを買い替える事になったのも、みんな俺のせいだ。
こう書くとお前が、握りはたいして差がつかなかった、とかドライバーで負けても小技は俺の方が上だったとか反論する声が聞こえるようだが、いつもセカンドショットを先に打つ時のお前の口惜しそうな顔が目に浮かぶぞ。

だがお前のおかげで、俺のゴルフは楽しかった。
いろいろなことはあったが、お前とのゴルフは楽しかった。
俺は、ゴルフとお前に感謝する。
どうもありがとう。

追伸
握りの勝ち逃げの分は、香典でチャラだ。
俺は遠くの19番ホールで酒を飲みながらゆっくりしているから、お前はもうしばらくゴルフを楽しんでいてくれ。

追伸
お前はここ一番で力が入ると、左の膝が早く伸びて突っ張る癖がある。
だから、肝心な時に左に引っ掛けてミスをする。
これは10年以上前から気がついていたんだが、握りに勝つためにお前に言わなかった。
親友とはいえ、永久スクラッチのライバルだ...心の狭い俺を許してくれ。

俺は笑っているんだぞ。


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「同じ白ティーからやって俺より飛ばすなんてね...」

(なんだよ、結局それが理由かよ。)
本当のところはそれが理由ならしょうがない、と妙に納得して黙って聞いている自分がいた。
会社の同僚から始まって、5年続いた男との別れの場面。
特に熱い会話がある訳でもなく、薄々感じていた事がはっきりとしただけの話。

彼に誘ってもらった事から始めたゴルフ。
すぐに夢中になって、ゴルフ教室でプロの指導を受け、週2回の練習と毎日のストレッチや素振りやジョギングを欠かさないようになった。
元々運動が好きで、学生時代はテニスやバレーボールで優勝経験もあった。
社会人になって運動する機会が無くなり、そういう事に飢えている時にゴルフに出会ったので一遍に熱中してしまったんだと思う。
身体のバネと柔らかさはまだ学生時代の遺産として残っていたので、ボールを打つタイミングと形を身体に覚えさせた後は上達は早かった。
特にインパクトのタイミングをつかんだ後は、プロも驚くくらいにボールがよく飛んだ。
ヘッドスピードもゴルフショップの測定では最高で45まで出た。

女性同士のコンペではいつもドラコンをとるのが当たり前になり、女性用の赤ティーで回るのがつまらなくなった。
会社のコンペや練習場のコンペでも、許されている時はなるべく男性と同じ白ティーからプレーするようになった。
スコアはボギーペース以上には中々ならなかったが、ボールを飛ばす事が気持ち良くてゴルフの誘いは断らなかった。

...彼とのゴルフでも同じティーからプレーするようになり、3回に1回は彼をアウトドライブすると「勝った!勝った!」と喜んでいた。
その頃から彼とのラウンドは少なくなり、一緒に出場するコンペでも同じ組にならないようになった。
自分はゴルフ自体が面白かったので、あまり気にしてなかったんだけれど...ある日、彼が深刻そうな顔で「ちょっと話があるんだけれど...」と言って来た時に、不思議にピンと来た。

「逢うのをやめよう」
その後いろいろと理由を話して、謝った上でこう言った。
「同じ白ティーから打って、俺より飛ばすなんて我慢出来ないんだ」
それが本音かよ。
それが最後の言葉かよ。

ゴルフが理由の別れだけれど、ゴルフがあるから大した痛みも感じない。
さよなら、どうもありがとう。

今度は、私は私より「飛ばす」男をみつけるわ。

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あいつからの年賀状には「謹賀新年」しか書いてない。
もっとも、俺からのだって「賀正」しか書かなかったんだから、お互い様か...

「あんなに仲が良かったのに、一体どうしたの?」なんて、以前一度だけ女房が聞いたことがあったけど、何も言いたくないので黙っていたらそれ以上聞こうとはしなくなった。
女房同士は今までと変わらずに付き合っているようだから、何か聞いているのかもしれないが...

...4年前に二人でダブルスの試合に出るまでは、永久スクラッチを約束したライバルであり親友とも言えた。
「俺たちなら、あのダブルス戦決勝でもいいところに行くぞ」なんて、どちらともなく言い出して参加を決めたある新聞社主催のダブルス戦。
お互いの良い方のスコアをカウントしていくから、予選でもパープレーとか1オーバーがカットになる。
でも、俺たちなら噛み合えばアンダーには絶対なるだろう...そんな自信が二人ともあった。
俺はショットに自信があったし、奴は小技とパットに強かったし...

試合では、どう見ても我々より上手くはなさそうな二人と一緒になり、自信を持ってスタートした。
...が、結果は信じられないくらい噛み合わなかった。
二人一緒に3ボギー、1ダボ...バーディーを二つとっても焼け石に水だった。
我々二人よりそれぞれグロスでは悪い同じ組の二人が、それぞれ80近く叩きながら見事に噛み合って1オーバーでまわったのに対し、我々は二人とも4オーバーでまわって3オーバー...2打足りずに予選落ちとなった。

その夜、二人で残念会をした...口惜しかったためか思ったより酒が進んだ。
「俺が悪かった...お前がOBを打った時に、お前の分も取り返すなんて力が入ってクリークに打ち込むなんて。」
「いや、俺が悪いんだ。 お前のトラブルを見て、無理にバーディー狙いにいって3パットして..」
「いや、俺が悪い。 堅く行くべき所でつい狙ってしまった..」
「いや、悪いのは俺だ...」
「いや、俺の方が悪い..」
...気がついたら、喧嘩になっていた。
なんの拍子にか、「もうお前とはゴルフやらねえ!」「ああ、俺もやりたくねえ!」
売り言葉に買い言葉だった。

そのまま、もう4年になる。
ただ、お中元とかお歳暮で、奴からはゴルフの小物が贈られてくる。
もちろん、俺からも同じだ。

去年のお歳暮には、流行のGPS距離計が贈られて来た...偶然俺から贈ったのも、違うメーカーの距離計だったけど。
なんだか気まずくて、一緒にゴルフする気になれない...が、付き合いが切れる訳でもないらしい。

女房はあきれて見ているのだが...

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