ゴルフな人々    (イラストレーター渡辺隆司のブログ)

ゴルフが人生に似てるのか、人生がゴルフに似てるのか... 忘れ得ぬ、ゴルフで出会った人々。

ゴルフ人生で、触れ合いすれ違った人達の、忘れられぬ想いを描き残しておきます。

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Kさんは、子供が学校に行くようになってから、夫の勧めもあってゴルフを始めた。
練習場のスクールに入ってから、月一でゴルフに行くようになってもう8年になる。
今では子供と夫の世話以外の生活は、月一回のゴルフに向けて集中して行く生活...練習場はスクールが週一回、夫が買ってくるゴルフ雑誌のレッスンを読み、テレビの試合を見て、週3回のパートの収入を積み立てる。
クラブや道具類は年に1〜2度、夫のボーナスからのプレゼントや、パートの収入を貯めて...勿論中古ゴルフショップで買う。
自分で始めてみるまでは、こんなにゴルフにはまるとは思わなかったし、こんなにゴルフが面白いとは思わなかった。

そんな日々を過ごす時に、折に触れて生きている時には1度しか会えなかった人の事を考える。
祖母の妹だった、数十年前に亡くなった女性。
一枚だけ残された彼女の若い頃の写真には、クラブを持って颯爽としたスタイルの彼女が映っている。
若くして亡くなったと聞いているが、生きていればもう90歳を楽に超えているはずの女性。
母が祖母から聞いた話では、ともかく新しい事や流行のものに目がなく、行動的でなんでもやってみた人だったと言う。
この時代ゴルフをやる人なんて極少なく、特に女性でゴルフをする人なんて大金持ちの婦人くらいで、普通の女性のゴルファーなんてまず見かけなかったという。
それが若く美しかったその人が、ゴルフバッグを担いでまだ少なかった練習場に出入りする姿は、近所でも評判となり色々と噂話が大変だったとか...
一族でも「変わり者」扱いだった彼女は、2度結婚をして離婚し、幼い頃の自分が会った時にはいかにも洋風の暮らしの似合う若々しいモダンな雰囲気の女性、と言う印象だった。

その後どんな風に人生を送ったのかは知らないけれど、彼女の残されたゴルフの写真と数々の華やかなエピソードを聞くたびに、一度ゆっくりと話をする機会が欲しかったと思う。
自分がゴルフを始めた事を話したら、どんなことを言ってくれるだろう。
あるいは一緒にラウンドする事が出来たら、どんな会話が出来ただろう。
彼女のゴルフは一体どんなゴルフだったんだろう。
彼女と一緒にフェアウェイを歩いた人は、どんなゴルファーだったんだろう。
現在だって親戚中でもゴルフをやる女性は少ないのに、あの時代に一人アゲンストウィンドに向かって立つ女性の姿が眩しい。
自分の一族、血筋の中で、一風変わった光を放つあの「伝説の女性」と一緒にゴルフがしたかった...自分がだんだんゴルフを深く知るようになって来て、改めてそんな思いにとらわれている。

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ある競技で一緒になったYさんは、一打一打を真剣にプレーする真面目なゴルファーだった。
礼儀正しく、ルールもマナーも良く知っていて、会話も楽しかった。

...ただ、スイングはぎこちなく、身体の硬さを思わせる小さなスイングアークとあまりリズム感のないスイングが、丁度映画の「ロボコップ」の動きを思い出させて、同伴競技者同士が思わず顔を見合わせて笑ってしまうほどだった。
でもYさんは、気にする事もなく淡々と真面目なプレーを続ける。
スコア的には、その組の誰もが「もうひとつ」という結果で、それほど差のつかない平凡な成績で終わってしまったが、記憶に残るような出来事はプレー後の風呂の脱衣所で起きた...

夏の終わりの頃で、皆が半袖でプレーしているのにYさんだけは長袖を着ていた。
そのYさんが、長袖のシャツを脱いだところで、隣にいた自分や周りの人が「えっ?」と驚く。
シャツの下には、流行の機能下着...それはわかる。
が、その上に右肩から肩用のサポーター、両肘に柔らかい肘用サポーター、さらに右腕に柔らかいゴムのサポーター、左手のグローブの下に親指を保護するサポーター、さらに右腕と左腕に何やら身体の機能とかバランスを高めるという宣伝をしている腕輪がひとずつ...

さらに腹には薄い大きな腹巻きと、その上にギュッと締め付けている磁石付きの大きな腰痛ベルト!

そして、ズボンを脱ぐと下にはやはり膝関節まで締め付けて機能するという機能下着に、両膝に膝痛用の締め付けサポーター、ふくらはぎにゴムのサポーター、さらに左足首に関節用のサポーター...

...そりゃあ、これだけ着けていれば動きだって「ロボコップ」になるでしょうよ。
唖然としている我々をよそに、Yさんは平然とした顔でそれらの装具を外して裸になる。
脱衣カゴはそれらの外した装具で山盛りになっている...

湯船で話をして聞いたところでは、Yさんはゴルフにともかく熱中していて、時間が許す限りほぼ毎日練習していて、練習に行くといつまでも球を打ち続ける...球数にして少なくても一日300球は打つのだと...
スコアとしては成果が出ているとは言えないけれど、ともかく毎日球を打つのが楽しくてしょうがないのだそうだ。
でも、その結果として(練習のやり過ぎで)腰痛と、右肩痛と、両肘の痛みと右肘の腱鞘炎と、両膝の痛みと、ふくらはぎの痛みと、左足首がいつも捻挫しているような状態なのと...本当は首も軽いむち打ち状態になっているのだと。
医者に行っても、医者は「ゴルフの練習をしばらく休むしかない」としか言わないので、最近は行ってないんだとか。

「やっぱりゴルフが好きなんで、練習もラウンドも休むなんてもったいなくて...」
その痛みを軽くするために色々試しているうちに、こんな状態になってしまったんだとか。
「首の痛みを固定するサポーターを使うと、スイング出来なくなるんで首にははめてませんけどね」
「少し休んで治してから、ゆっくりゴルフ再開するようにした方がいいんじゃないですか?」
「とんでもない! 半年とか一年とか、ゴルフをやれないんなら死んだ方がましです。」
...この日のラウンドの後も、練習場に寄ってから帰るんだそうだ。

自分もゴルフを始めた頃にはそんな気持ちもあったけど、今はとてもそんな「燃える情熱」なんてありゃしない。
あちこち痛める度に練習場から遠ざかってるし。
最近じゃ、「ラウンドしたいから練習しない」なんて状態だ。

でもなあ...
こういう「ロボコップ」みたいな人って、結構多いのかもしれない。
だって...暑い日も寒い日も、雨の日も風の日も、台風の大嵐の時だって、クローズしてなきゃ練習場には打っている人が絶対にいるものねえ。


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ゴルフというのは、時間がかかるスポーツだとSさんは思っている。
普通のスポーツは、長いと思われるサッカーや野球だって3時間もかからないだろう。
それなのにゴルフときたら、一日がかりとか半日かけてとかいう単位が普通なんだからともかく長い。

Sさんが最初にラウンドした時には、朝6時に朝食をとってから9時スタート、11時半過ぎにハーフが終わる前にお腹がすいて貧血で倒れてしまった。

だから、Sさんは食べる。
スタート前にコンビニですぐに食べる朝食用の弁当のほかに、おにぎり、饅頭、ビスケット、餅、飴、チョコレート、バナナなどを買い込んでおく。
そして、それらを1ホール終わるごとに食べる。
まずは飴やチョコレート、つぎにビスケットや饅頭、そしてバナナ...

勿論、昼食はちゃんとしたご飯ものを食べる。
そして午後のハーフ。
お菓子類を食べた後、残った饅頭やお餅を食べる...16番からの3ホールには、取って置いた長持ちする赤飯や梅干しのおにぎりでお腹をしっかりと落ち着かせてから、気合いを入れてプレーする。
おかげで18ホール、気力が途切れる事もなく少しずつ結果が出て来ている。

が、小さな事だけど問題も出て来てしまった。
他のみんなはラウンド後に風呂場で体重計に乗って、「今日は2キロも減ってる!」とか「汗かいたから3キロも減ってる」とか言っているのに...自分はいつも1〜2キロ増えているのだ。
その体重は、次のゴルフまで日にちがあいていれば元に戻るんだけど、毎週のようにラウンドしたりすると確実に増えて行く。

現実にゴルフを始めてから5年で8キロ増えている。
でも、ゴルフをプレーしているときは何かを食べながらでなくては、貧血を起こしそうで不安で楽しめない。
Sさんは、悩んでいる...「食べなくてはゴルフ出来ないし...」
「ゴルフすると太るっていうのは自分だけかしら」


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