ゴルフな人々    (イラストレーター渡辺隆司のブログ)

ゴルフが人生に似てるのか、人生がゴルフに似てるのか... 忘れ得ぬ、ゴルフで出会った人々。

ゴルフ人生で、触れ合いすれ違った人達の、忘れられぬ想いを描き残しておきます。

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ずいぶん頑張ったものだと思う。

娘一人を自分一人で育てる環境になったあと、大袈裟じゃなく普通の人の2倍働いて来た。

娘が独り立ち出来る迄。
学生から社会人になる迄。

自分で決めた事だから、弱気になる事は度々あっても、迷わずに歩いて来た。
もう無理か、と思われる時々に、思わぬ出会いで助けられた事が何度もあった。

...そうして去年、娘は大学を卒業して無事に就職出来た。
一番重かった荷物は肩から降りた。
しかし、まだマンションのローンは残っているし、自分の生活だって続けなくてはならない。
人の二倍働く事はしなくても良くなったけど、普通の人並みに働き続ける事は変わらない。
...でも、自分の楽しみのための時間を、これからは取る事が出来る。

美味しいものを食べたり、酒を飲んだり、コンサートに行ったり、少しだけ自分を飾ったり...
それと、ずっと封印していたゴルフも、また楽しむ事が出来るだろう。
ずっと以前、レッスンプロについて練習していて、ベストスコアは90を切っていたゴルフ。
もう二十年以上昔の話だけれど、そのとき使っていたクラブはまだ置いてある。
ゴルフをやるなんて余裕なんか全く無かったこの二十年、それでもクラブを処分しないで置いてあったのは、「いつかまた、ゴルフを出来るようになる時が来る」という事を信じていたからか。
あるいは、そういう時代がまた来れば良い、という願いを込めていたからか...

なんだか少し楽になった休日に、久し振りのクラブを日なたに出して磨いてみた。
パターのシャフトには、うっすらと錆が浮かび、グリップは少しカビのようなものが出て硬くなっている。
ドライバーもフェアウェイウッドも、今のものに比べればヘッドはずっと小さくて、ヘッドカバーにもうっすらと埃が積もっている。

外は冷たい風が吹いていても、窓ガラスのこちらの日なたは暖かい春になっている。
その光の中、雑巾でクラブを拭いていた。
...明るい太陽の下、濃い緑のフェアウェーで真っ白いボールを打つ。
青空に白球が1本の線を引き、明るい緑のグリーンに届く。
赤い旗をつけたピンの根元にボールは落ち、若い魅力的な自分が両手を上げて喜ぶ。
若くて奇麗だった自分...
ゴルフが好きで、一打一打に喜怒哀楽の感情が溢れ出た。
このゲームをずっと楽しみ、自分が確実に上手くなって行く事を信じていた。

窓ガラスが風に動かされる音で、気がついた。
クラブを手に持ったまま、居眠りをしていたようだ。
夢の続きを思いだそうとして、ふと鏡に映った自分に気がつく。
...時は流れたのだ。
二十年の時間は、自分の顔に、手にしたクラブにその証拠を残し、昔には戻れない事を嫌という程見せつける。

でも、全部のクラブを磨き上げたとき、自然に考えた。
...「ゴルフをまた今年から始めたい。」

「ゴルフは人生に似てる」とよく言われるけれど...もし本当にそうならば、人生を知らなかった昔の自分より、より多く人生を経験した今の自分の方が、ずっと深くゴルフを楽しめるはず。
記憶にある若い自分が遊んだゴルフより、もっともっと素晴らしい「大人のゴルフ」は、これから始められるはず。

きっと今年中に、自分はまたゴルフを再開するだろう。
勿論百なんか絶対切れない、下手くそゴルファーのはずだけど、そこには以前の何倍もゴルフを楽しむ自分がいるはずだ。
とりあえず、今のルールを勉強しよう。
二十年の時を越えられなかった、グローブやシューズや小物を揃えよう。
ウェアは...今の自分に着られるだろうか? 

焦らずに、練習を始めよう。
ちゃんとこのクラブを使えるようになろう。



...ああ、それから、涙が出るのを我慢する練習も必要かもしれない。

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オープンコンペで出会う人には、いろいろな人が居る。
いい人、悪い人、変な人、おかしな人、珍しい人、何処にでもいる人、嫌な奴に馬鹿な奴、悲しい人に寂しい人、カラ元気屋にやせ我慢屋、もっと生きてて欲しい人、速く死んで欲しい人...

なんて、勝手な事言ってるけれど、この人はそんな人達とは全く違った...「違う人」だった。

同じ年,,,だけど、髪の毛は黒くフサフサで(染めてるんだろうけれど)、長髪に片耳ピアス、いい色に日焼けして白い歯で...
ハンサムな若さを残した中年風で、人当たりも良く、ゴルフも歯切れよくスピーディー。
腕はシングルハンデで、癖の無い良いスイングをしている。

...ラウンドしながらの彼から聞いた話。

明後日には日本を発って、ラスベガスに行く。
ラスベガスには、一流ホテルの部屋を一部屋、年間契約してとってある。
そんなホテルが、東南アジアとヨーロッパにも。
カジノが好きで、よく遊びに行く。
昨年は、半年以上かけて世界一周クルージングしていて、大震災のニュースもヨットの中で知った。
普通、一年のうち8ヶ月は外国で暮らしている。
ノートパソコン一台あれば、仕事はできる。
若い頃、他人より何倍も懸命に働いた。
その貯めたお金を元にして、今は投資家として暮らしている。
しっかり勉強して、堅実な投資で成功している。
ギャンブル性の高い、信用取り引きは一切しない。
堅実な情報を大手証券会社から得て、信用に応える用意はいつもしている。
そのために動かせる資金は、数千万以上いつも用意している。
日本にずっといないのはそういう情報を得るためもある。
ゴルフは、世界中の名コースと言われている所は殆ど回った。
奥さんには十分な額を渡しているので、それぞれ自由にやっている。
子供は既に就職しているが、自分の資産を当てにしているなら自分の言う事を訊くように言ってある。
最近、息子の付き合っていた女性が好みではなかったので、自分の資産を当てにしているなら別れろと言った。
子供はそれに従って、その女と別れた。
...

等々。

何処の世界の話だろう?
少なくとも自分の人生の、歩いて来た道の周りには、そんな人生は無かったなあ。
彼は、嫌な感じを持たせない好人物。
しかし、どこかの違う世界の住人。
一万円のプレーフィーを考える自分達とは、比べようもなく。

そういう人生を送る同い年の男もいれば、一人病院のベッドにいる同い年の男もいる。
...勝ち組と負け組では済まされない違いがある。

しかし、もう一度人生をやり直せると考えて、自分は彼のようになりたいだろうか?
彼の持っているお金は正直羨ましい。
しかし、自分の来た道を振り返ると、自分の生き方では、今の自分がベストの自分。
莫大な収入と引き換えに、絵を描き始めてからの人生を捨てる事は出来やしない。
何より出会った人達が、みな捨て難い。
良い奴も嫌な奴も捨て難い。
素晴らしい女性達は、もっと捨て難い(笑)。

まあ、金を持っていない貧乏人の、焼きもち嫉妬の類いからだろうけれど、彼に会ってそんな事まで考えた。
そうなんだ...ピンと来ないけど、凄いんだ...って。

...彼は、高そうな黒いベンツで、微笑みながら帰って行った。


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ごめんなさい!

あんた、本当にごめんなさい。
あたし、心から謝ります。

あんたのキャディーバッグが、狭い廊下においてあるのが邪魔だからって、行き帰りに力任せに蹴っ飛ばしていたのを、謝ります。
あんたが見ていたテレビのゴルフ中継を、問答無用でチャンネルを変えてしまったのを謝ります。
あんたが読んでいたゴルフ雑誌を、ゴミの日にみんな捨ててしまったのを謝ります。

あんたが朝早く起きて、一人でゴルフへ行く用意をしているのを、「朝早くからうるさい!」って怒鳴ったのを謝ります。
あんたがゴルフ場から持って来たお土産に、一度も「ありがとう」って言わなかったのを謝ります。
あんたのゴルフウェアの洗濯を、いつも乱暴にしていたのを謝ります。

あんたが嬉しそうに持ち帰った優勝カップを、すぐに子供の砂遊びに使わせてしまったのを謝ります。
土曜.日曜にゴルフに行ったあんたを、子供と一緒に呪っていたのを謝ります。
一つ新しい道具を買う度に、一ヶ月以上悪口を言っていたのを謝ります。

庭で素振りをするあんたを、「格好悪くて見てらんない」なんて言ったのを謝ります。
「どうせ運動神経無いんだから、いい加減に諦めたら」なんて言ったのも謝ります。
「そんな金持ち気取りのジジイの遊び、あんたは身の程知らずなのよ!」なんて言ったのも謝ります。


...でも、あたしが悪いのは認めるけど、あんただって悪いと思うのよ。
だって、ゴルフがこんなに面白いものだなんて、あたしに教えてくれなかったじゃない。
自分一人で楽しんでいたんじゃない。
あたしは、ついこの前、無理矢理となりの奥さんに練習場に連れて行かれて、それで初めてゴルフを知ったんだから。
なかなか当たらなかったけど、当たったらあんなに気持ちが良いもの無かったわ。

あたし、パートに出て自分でゴルフのお金貯めるから。
それでゴルフを始めるから。
家計に負担かけないから。
家事にも手を抜かないから。


あたし、本当にあんたとゴルフに対して謝るから。

今迄本当に、本当に、ごめんなさい。




...それで、絶対あんたより上手くなってみせるから。

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