ゴルフな人々    (イラストレーター渡辺隆司のブログ)

ゴルフが人生に似てるのか、人生がゴルフに似てるのか... 忘れ得ぬ、ゴルフで出会った人々。

ゴルフ人生で、触れ合いすれ違った人達の、忘れられぬ想いを描き残しておきます。

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オープンコンペに一人で参加していると、色々なカップルと一緒になる事がある。
勿論一番多いのが夫婦。
若い夫婦というのは滅多にいないが、中年から老年にさしかかった「山坂乗り越えて来た」夫婦には、それぞれの長い付き合いの味が色々と滲み出て来て、とても面白い。
..結構な割合で途中喧嘩を始める夫婦もいるけれど、それもしょうがない(身に覚えがある事だし)。

そして結構多いのが、仲が良さそうな雰囲気なのに「名前」が違う二人。
その中で多数を占めるのは、やっぱり女性の方が「水商売」独特の華やかさを持っているケース。
夫婦の場合の妻の女性と違って、服装も道具も流行の高級そうなものを使っているし、男性が妙に優しく接している。
女性にも男性にどこか甘えている雰囲気がある(演技にしても)。
それ以外では、同級生だとか会社の上司と部下だとか、仕事先の担当者同士だとか言う場合があった。

明らかに夫婦じゃない二人と一緒になった場合、残った我々(たいていの場合、男一人で参加したものどうしが組み合わされる)は、なるべくプライベートな事には踏み込まないようにして、ラウンドし会話する。
それでも大体二人がどういう関係かはわかってくるもので、すぐにそんな事は忘れてプレーを楽しむようになる。

かなり前の話だけれど、一組だけどうしても二人の関係がわからなくて、プレーの間中もう一人の男性と首をひねって二人の関係をひそひそと話し合っていた事があった。
男は50代の小太りでエネルギッシュな感じ...女性は30代の何とも清楚な感じの大人しそうな美しい女性。
この女性が全く水商売という感じのない美人だったので、男二人は考えてしまったのだ。
男が気を使って話しかけているのはわかる..でも明らかに夫婦や愛人と言うほど近くはない感じ。
女は口数も少なく淡々とゴルフを楽しみ、我々にも普通に敬語を使って話をする。
「親子ではないし、上司と部下にも見えないし、どういう関係なんでしょうねえ?」
「夫婦でも愛人でも構わないんですけど、よくわからない二人って気になりますねえ..」
「ゴルフだけ付き合ってくれる女性なんてのもいますけど、それほど愛想が良い訳でもないし..客商売には見えないし...」
「きれいな女性だけに、ねえ..」

ゴルフは、男性が自己流のオーバースイングのカット打ちで100前後だったの対し、女性はルーティーンの決まった癖のないフォームで90前後で回っていた。
明らかに練習場か何処かでプロに教わっているのがわかるスイング...基本に忠実で余計な事はしない、つまりアプローチは転がしだけ、バンカーはグリーンセンターに出すだけ、池は避けフェアウェイキープ第一...入れればパー、外せばダボくらいのスコア。
男はそれに対して何も言わないし、女性も男性のスイングに何も言わない。

我々一人参加の男達はと言えば、そんな二人...と言うよりその美しい女性が気になって、二人とも90オーバーしてしまった。
自分のボールそっちのけで、ついつい彼女の様子をうかがい、彼女のゴルフを見てしまうのだ。

「奇麗な人でしたからねえ」「どんな関係なのか気になっちゃって...」
「そんな余計な事考えてゴルフしちゃダメですね」「ゴルフに集中しないで、よけいな雑念ばっかりじゃねえ..」
「我々、鼻の下伸ばしちゃったんですかねえ」「これもスケベ心なんですか...困ったもんです」
なんて、二人で表彰式(二人とも外れ)の後、顔を見合わせて苦笑い。


...ホントに男って馬鹿だねえ(笑)。


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自分が惚れて来たゴルフというものは、死ぬまで楽しめるゲームだと思っていた。
でも、Mさんはそのゴルフが終わりに近づいて来たのを感じている。

まだ、それほどゴルフが一般的でない時に、仕事の関係上付き合いで始めたゴルフ。
道具もプレーフィーも馬鹿高かったけど、仕事を続けて行くためにはやらなければならなかった。
...もちろん嫌々始めたゴルフでも、始めてみれば野球で鍛えた運動神経のもと、すぐに熱中して上達して行った。
その後でジャンボや青木の登場でゴルフブームが起き、一歩先に進んでいたMさんは人の何倍もゴルフを楽しむ事が出来た。
大した実績は作れなかったけれど、競技に熱中して色々な試合の予選を通った事も多かった。
そうして何より、ゴルフで得た友人やライバルがゴルフを一層面白くさせてくれた。

だけど、そろそろ...
スクラッチのライバルはもう既に、この世を去った。
友人達も多くはクラブを置いた...経済的な理由や健康面の理由で。

ゴルフの内容もすっかり変わってしまった。
飛ばなくなった...ちょっと前までは一緒に回った人に負ける事はまずなかったのに。
アイアンがダメだ...もうプロモデルはろくに当たらない。
アプローチが寄らない...あれほど手に覚え込ませたタッチがわからなくなった。
パットが入らない...老眼が進んで、グリーンの傾斜が判らないし、速さの変化に対応出来ない。
...もう、スコアもつける事が面倒になるほどになった。

そして何より、2年前に奥さんを亡くした。

ゴルフを始めた頃から、ゴルフから帰って来たら(スコアが良かったときだけは)奥さんにそのラウンドの出来事を話すのが楽しみだった...そうしてもう一回その日のゴルフを楽しんだ。
顔を見て結果が分かるらしく、スコアが悪かったときは何も言わずに笑ってビールを出してくれた。
子供の手が離れてしばらく時間が経って...やがて奥さんもゴルフを始めて、時々一緒に行くようになり、定年になってからは奥さんと一緒に回る事のほうが多くなった。
コースでよく喧嘩もしたし、言い合いもしたけれど...楽しかった。
一生懸命スコアだけを追っていた競技ゴルフ熱中時代より、ずっとゴルフを楽しんでいた。
...でも、そんな事に改めて気がついたのは奥さんがいなくなった後だった。
今でもティーグランドに立つ時には、旅立ちのときの興奮が僅かに胸の内に湧き起こるんだけれど、すぐに帰った時の誰もいない淋しさに耐えられない自分の気持ちに思いが移る。
ゴルフっていうのは本来誰にも頼らずに、独りで立ち向かって行くゲームのはずなのに、なんでこんな思いになるんだろう。
Mさんはキャディーバッグからクラブを取り出して、ため息をつく。


...そろそろ潮時なのかな。

19番ホールに妻がいないと空しくてたまらない、なんて。

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Kさんは、子供が学校に行くようになってから、夫の勧めもあってゴルフを始めた。
練習場のスクールに入ってから、月一でゴルフに行くようになってもう8年になる。
今では子供と夫の世話以外の生活は、月一回のゴルフに向けて集中して行く生活...練習場はスクールが週一回、夫が買ってくるゴルフ雑誌のレッスンを読み、テレビの試合を見て、週3回のパートの収入を積み立てる。
クラブや道具類は年に1〜2度、夫のボーナスからのプレゼントや、パートの収入を貯めて...勿論中古ゴルフショップで買う。
自分で始めてみるまでは、こんなにゴルフにはまるとは思わなかったし、こんなにゴルフが面白いとは思わなかった。

そんな日々を過ごす時に、折に触れて生きている時には1度しか会えなかった人の事を考える。
祖母の妹だった、数十年前に亡くなった女性。
一枚だけ残された彼女の若い頃の写真には、クラブを持って颯爽としたスタイルの彼女が映っている。
若くして亡くなったと聞いているが、生きていればもう90歳を楽に超えているはずの女性。
母が祖母から聞いた話では、ともかく新しい事や流行のものに目がなく、行動的でなんでもやってみた人だったと言う。
この時代ゴルフをやる人なんて極少なく、特に女性でゴルフをする人なんて大金持ちの婦人くらいで、普通の女性のゴルファーなんてまず見かけなかったという。
それが若く美しかったその人が、ゴルフバッグを担いでまだ少なかった練習場に出入りする姿は、近所でも評判となり色々と噂話が大変だったとか...
一族でも「変わり者」扱いだった彼女は、2度結婚をして離婚し、幼い頃の自分が会った時にはいかにも洋風の暮らしの似合う若々しいモダンな雰囲気の女性、と言う印象だった。

その後どんな風に人生を送ったのかは知らないけれど、彼女の残されたゴルフの写真と数々の華やかなエピソードを聞くたびに、一度ゆっくりと話をする機会が欲しかったと思う。
自分がゴルフを始めた事を話したら、どんなことを言ってくれるだろう。
あるいは一緒にラウンドする事が出来たら、どんな会話が出来ただろう。
彼女のゴルフは一体どんなゴルフだったんだろう。
彼女と一緒にフェアウェイを歩いた人は、どんなゴルファーだったんだろう。
現在だって親戚中でもゴルフをやる女性は少ないのに、あの時代に一人アゲンストウィンドに向かって立つ女性の姿が眩しい。
自分の一族、血筋の中で、一風変わった光を放つあの「伝説の女性」と一緒にゴルフがしたかった...自分がだんだんゴルフを深く知るようになって来て、改めてそんな思いにとらわれている。

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