ゴルフな人々    (イラストレーター渡辺隆司のブログ)

ゴルフが人生に似てるのか、人生がゴルフに似てるのか... 忘れ得ぬ、ゴルフで出会った人々。

ゴルフ人生で、触れ合いすれ違った人達の、忘れられぬ想いを描き残しておきます。

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野球少年...ある程度以上の年代の男達は、一度は野球少年だった時代があるものだ。
今と違って「プロスポーツ」の選択肢が野球しかなかった時代、甲子園、そしてプロ野球はスポーツ好きの少年達の憧れだった。

年に一度か二度ゴルフを一緒に楽しむ仲間に、甲子園を目指し、プロを目指したHという「元」野球少年がいる。
幼い頃から野球に関わった彼の人生は、プロ野球選手の夢は諦めても、野球に関わる仕事を今でも続けている。

彼は一言で言えば「まっすぐ」な男...気性も「まっすぐ」、生き方も「まっすぐ」。
(彼は、多分ストレートボールにめっぽう強いバッターだったんだろう)
当然仕事も「まっすぐ」、付き合いも酒も「まっすぐ」、恋愛も「まっすぐ」...男らしい性格の為か、女性、特に色々と苦労をした女性達にめっぽうモテる。

...なのに悲しいかな、ゴルフだけは「まっすぐ」行かない。

それが彼の心を捉えたんだろう...それに、もう野球を現役でプレーする年齢を過ぎたためか、ゴルフが大好き。
そのプレーは楽しいの一言。

俺が一年でプレーするゴルフの中で、彼とのプレーほど腹を抱えて笑える楽しいゴルフはない。
良いときには30台、悪いと50も打つ彼のゴルフは、仕事の関係でやむを得ないところがある。
今や新聞社のプロ野球担当のデスクとなっている彼は、プロ野球のシーズン中は忙しくて滅多にゴルフが出来ない。
やっとゴルフを楽しめるのは、プロ野球のシーズンが終わった後の冬の時期...それも大きなトレードとかが起きると休めない。
だから、彼のゴルフはプロ野球の選手達と同様、殆どは「枯れ芝」の季節にしかできない。
そうして、やっと出来るゴルフを、彼は「まっすぐ」思いきり楽しむ。
ゴルフ場ではいつでも彼は目の輝く少年に戻る...その姿はやっぱりずっと変わらぬ「ベースボールボーイ」。

人生でこれだけは「まっすぐ」行かないゴルフボールに、彼は悲しそうに声をあげる「がっでむ!」。
ミスしたときの彼の口癖のこの言葉は、普通褒められた言葉じゃないんだけど、彼が発するとその音は男の哀愁と悲しみと絶望と復活を併せ持った「彼」だけの言葉になる。

「がっでむ!」

それがなんともおかしくて、俺は腹を抱えて枯れ芝の上を笑い転げる。

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それなりに魅力的な女性が、一人参加でオープンコンペの同じ組になった。
朝、駐車場で私の車の隣に止まったピンクのオープンカーに乗っていた女性だ。
他の男性3人も、それぞれ一人参加の4人。
場所は茨城県のSカントリークラブのオープンコンペ。

結構ハードなコースで、スコアがまとまりにくい。
俺もどうもかみ合わせが悪くて、バーディー獲ると次のホールでダボを叩いたり、オナーになったホールで真っ先にOB打ったりで調子が良くない。
他の人もスコアは似たり寄ったりで、何となくのボギーペースの人ばっかり。

その女性は、自己流でスイングを作ったようで、ちょっと癖があるけどボールを打つのは凄く上手い。
かなりのラウンド数をこなしているように見える。
話を聞くと、会社の仕事絡みでゴルフを覚えた後ハマってしまい、独学で週刊誌やDVDで色々と勉強して、実戦経験を積む為にオープンコンペに参加しているんだそうだ。
いつもは男性と一緒に白ティーでやるんだけれど、このコースは距離があるのでレディースティーからやります、と言っていた。

彼女はティーも違うし飛距離も違うので、必然的に一人で黙々とプレーすることになる。
それにけっこう真面目に...というよりこの組の誰よりもスコアにこだわってプレーしていた。
ハーフが終わると、スコアは男3人は皆似たり寄ったりの45前後。
彼女は、頑張ってた割にはつまらないミスが多く、50を超えていた。

憮然とした顔でテーブルに着いた彼女は、いきなり「生ビール!大ジョッキで!」。

男3人は、
「飲んじゃいけないと医者に言われているから」
「私は酒が飲めません」
「私は午後ちゃんとやりたいので」
で皆コーヒー。

一応、乾杯。

グイッと大ジョッキをつかんだ彼女は、グビッ、グビッとビールをあおる。
そして、口に泡を付けてジョッキをいったん置いた。

「ゲフッ!」

中年男3人、顔を見合わせる。

もう三口...

「ゲフッ!」

目の回りを赤くした彼女は、「彼女以外ここには誰もいない」、といった風情で大ジョッキを飲み干した。
後半のハーフ、顔を真っ赤にした彼女は、コースをたった一人でプレーしているような雰囲気で、真面目に懸命にプレーを続ける。
気合いも情熱も十分感じるプレーだったけど、このコースは今の彼女の腕には難し過ぎた。
男3人は皆90前後、彼女は100を軽く越えてスコアを提出。

パーティーでは、結局誰もなんにも絡まずに、4人とも黙ってウーロン茶を飲むだけだった。

彼女は自分が何も絡まない事が判ると、さっさと席を立ってピンクのオープンカーをブイっとスタートさせ、枯れ葉を宙に舞わせながら颯爽とコースを後にして行った。


中年男3人、
「なんだか...今日は疲れましたね」。 

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その近辺に行った時には、必ず立ち寄る喫茶店がある。
そこにいる50年配の独身のマスターはゴルフ好きでギャンブル好き...結構ハンサムだし、ゴルフも上手い。
もう20年以上前からのゴルフ仲間で、昔は一緒にオープンコンペに出て楽しんだりもした。
共に「昭和的」なゴルフの技にこだわり、オープンコンペで出会った「偉そうで 嫌な上級者」を、一緒に「グーの音も出ない程凹ます」のを無情の楽しみにしていた時期があった。

彼の喫茶店は、周りにある会社勤めのサラリーマンが主な客のために、平日に休むことが出来ずに土、日が休み。
...安くなったとはいえ、やはり土日のプレーフィーは平日の倍ほどかかる。
おまけに巡り合わせで土日に天気の悪い日が続いたりすると、彼のゴルフは二ヶ月に一回とか三ヶ月に一回とかになることがしばしば。
彼とは年一回ペースでゴルフをやっているけれど、時にフックボールでミスをしながらも80台前半では回ってくる。
飛ばしにこだわりがあって、ティーショットはフルスイングしなければ気が済まないと言う頑固さも持っている。

そんな彼はここ数年、以前から痛めていた肘の調子が思わしくなく、その箇所が喫茶店の仕事にも影響が出る程悪くなっている為に、ラウンド数が極端に減っている。
そんな、満足にスイング出来ない様な身体になっていてもゴルフ雑誌は毎週買っていて、ゴルフ界の最先端の情報をよく知っている。
新しいギアのことにも非常に詳しい。

彼のもう一つの趣味が競馬。
結構当てるのが上手いらしく、穴狙いでそこそこ当てていると言う噂を聞く。
そして、その当たった金はゴルフのギアにつぎ込む。
最新情報に詳しいから、シャフトやヘッドも俺の全く知らないような評判の良い新製品を選んで、アイアンもウッドも買い変えてしまう。

コーヒーを飲みに行くと、彼とはゴルフの話ばかり。
(実際のラウンドには行けてないのに)新しく買ったドライバーがどのくらい良いか、ユーティリティークラブがどうだとか、パターが以前のとどう違うか、から始まって。
「ロングアイアンが使えなくちゃゴルファーじゃない」し、「ボールをバシッと叩き切らなきゃゴルフはつまらない」とか、「アプローチはカップ際でギュンと止めなきゃ美しくない」とか。
...そんな話を1時間も2時間も。

そんなマスターが去年実際にラウンドしたのは4回程。
今年は、まだ2回しかしていない。
その最近の2ラウンドは、いずれも途中でのラウンド中止だった。
なんとか痛みをこらえてスタートしても、ハーフくらいで肘の痛みがどうしようもなく強くなり、プレー続行不可能となってしまうのだ。
 
「もっと軽く振れば良いじゃない」とか、「もっと柔らかいシャフトで肘の負担を減らせば?」とかのアドバイスは全く聞かない...「それじゃあ、ゴルフじゃない!」って。

肘は手術をしなければ治らないと医者に言われているそうだ。
「なんで手術して完全に治さないの?」
「この店一人でやっているから、手術すると一ヶ月は手が使えなくなるので無理。」
「いつかは良くなると思ってる。」
仕事中でも時々「イテッ!」と言う表情を見せながら、彼はまた来る素晴らしいゴルフシーズンに、昔の様なボールを打つ事を夢見て、新しいゴルフ情報を真面目に仕入れている。





「今度、馬が当たったら...」



 

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