ゴルフな人々    (イラストレーター渡辺隆司のブログ)

ゴルフが人生に似てるのか、人生がゴルフに似てるのか... 忘れ得ぬ、ゴルフで出会った人々。

ゴルフ人生で、触れ合いすれ違った人達の、忘れられぬ想いを描き残しておきます。

img_0-39



その男の父親は、一般の人ではまだプレーする人の少なかった1960年代から、ゴルフに夢中になっていたんだという。
仕事が順調で結構裕福であったらしく、名門とはいかないまでも、それなりのコースに入会して週一はゴルフをやっていたんだという。
ただ、息子であるその男は、いわゆる全共闘世代で、当然その頃の(俺も同じイメージを持っていた)ブルジョア階級のチャラチャラと女を侍らして、ポコンポコンと棒きれでボールを転がしつつ歯の浮くようなお世辞を言い合う、そんな風にしか見えなかった「ゴルフと言う遊び」が大嫌いだったそうだ。

熱心な割には、それほど上手くはなかったというその父親は、それでもその頃の一流の道具や服装には敏感で、結構な金をゴルフにつぎ込んでいたらしい。

...時が流れて、その父親が亡くなってから、彼自身がふとしたきっかけからゴルフをプレーすることになった。
そして、ゴルフによくある話のように、「始めてみたら、こんなに面白い物はなかった」という出会いとなり、親父に比べて多くない稼ぎの半分以上をゴルフにつぎ込む「熱いゴルファー」の誕生となった。
当然、最新の「飛ぶ」とか「正確な」とか言う売り文句の道具についても、金を工面しながら熱心に買い換えるようになり、やっと亡くなった父親の気持ちが分かるようになったという。

彼自身安いコースのメンバーとなり、競技もするようになって、やっと「ああ、父親とこんな話をしたかったなあ」と思うようになった。
そしてあまり帰ることのなかった故郷に、そんなことを父の墓の前で話したくて帰った時の出来事。

母親に、「父親の使っていたゴルフの道具がまだ物置にそのまましまってある」と聞いて物置の中を調べた。
そこには使い込んだ皮製のキャディーバッグがあり、中にはマグレガーのパーシモンウッドとスポルディングの赤トップのセットがあり、赤トップはうっすらと銅下メッキが透けて見えるほど使い込んであった。
ゴルフの知識を持つようになった今では、それがどんな名器だったかが判ることもあり、改めてオヤジの熱中ぶりが実感として感じられた。
そしてその時、そのキャディーバッグの奥にもう一つキャディーバッグがあるのを見つけた。
使われた事の無い様な奇麗な状態で、引っ張り出して中を見ると、そこには全く使っていない新品の状態のフルセットのクラブが入っていた。
ウッドはやはりマグレガーのパーシモンの1番3番4番、そしてアイアンは...黒トップの2番からサンドまで...パターはピン。

「なんで使ってない物が?」と不思議に思って、キャディーバッグのポケットを調べてみると、上側の小さなポケットから小さな紙切れが出てきた。
「ドライバーは初心者でも使えるロフトの大きな物、アイアンは低重心でRシャフト、パターは易しいピン...OO(彼の名前)用」
母親に聞いてみると、父親が「あいつはきっとゴルフを始めることになるから、いいモノを今のうちに揃えておいて、あいつが始めたらプレゼントするんだ。」と言っていたとか。
「俺が手ほどきして、親子でラウンドするなんてのがこれからの楽しみだよ」
母の前ではそれが口癖だったらしい...俺に言った事なんか無かったのに。

黒トップは、確かに彼の父親の赤トップよりは低重心に見えるデザインだが、ネックが長いために見かけほど低重心じゃないし、スチールのRシャフトだって今のシャフトに比べれば重いし硬いし、ましてパーシモンウッドにスチールシャフトなんて今じゃ過去の遺物で使えやしない。

...でも...



オヤジが生きているうちに始めていれば良かった。


img_0-38

朝晩、老犬と散歩する。
もう何時死んでもおかしくない歳になった老犬だから、歩くのもゆっくりだし、長い距離も歩けない。
でも、朝晩の散歩に家を出るときは、嬉しそうに尻尾を勢いよく振る。
散歩に尻尾を振って喜んでいる間は、ずっと付き合って上げようと決めている。

夫とは、子育てが一段落したときに離婚を話し合った事があったけど、そのために費やすエネルギーや子供関係なんかの細かい事柄が面倒になってしまって、そのままずっと来ている。
恋愛結婚だったけど、夫が今誰と会ってるかなんかは知る気にもならない。
最低限の生活費は入れてくれるけど、それだけでは生活に余裕がない。
それで、子供の手が離れたときから介護士の仕事を始めて、へそくりを貯めてきた。
そのへそくりで5年ほど前からゴルフを始めて、今はそれが生活の中で一番楽しい時間になっている。
一昨年は40ラウンド、昨年は36ラウンドもした。
もっとも殆どは、近いところにある手引きカートの9ホールのコースだけれど。
介護士の仕事のへそくりは70万以上あったから、遣り繰りして仕事も休まなければ月に一ー二回は高いコースに行っても十分だった。

...でも、昨年の秋、犬が病気になった。
年が年だけに、病院に連れて行くと「難しい手術をするか安楽死をさせるか」という選択を迫られた。
...手術には多額のお金がかかる。
子供の頃から犬を飼っていて、犬と暮らすことが自然な自分と違って、夫は犬嫌いではないが好きでもないというスタンスだった。
当然、犬の手術に必要なお金は出してはくれず、自分のへそくりをはたいて手術することにした。
自分にとっては、この老犬は「家族の一員」という感覚なんだから、「安楽死」なんて考えもしなかった。

...手術は成功したけれど、手術代は47万円ちょっと。
それだけじゃなくて、通院や治療代が10万以上かかって、へそくりはほとんど無くなった。

ゴルフは去年の秋から、行っていない。
今年、まだ一度もゴルフに行けない。
毎日クラブには触っているんだけれど、何時また犬の治療でお金がかかるか判らないので、へそくりをゴルフに使えない。
...近所のゴルフに行っていたときの知り合いと、ちょっとお茶を飲みながらゴルフの話をするのがささやかな楽しみ。

ゴルフに行っていたときの仲間のサークルには「休会届け」を出している...みんなは、また参加することが出来る日を待っていてくれている。
夕方の散歩で、夕日の良く見える川の土手に来ると、何時も思い切りドライバーを振り回したときの感覚が蘇ってくる。
大丈夫、仕事でお金を貯めて、犬も元気になって、青空の下でボールを思い切り打つことが出来る日がきっと来る。

そう思って犬を見たら、笑って尻尾を振っているように見えた。


img_0-37



Tさんは、ゴルフが好きだ。
30年くらい前にゴルフに出会ってから、その飛んで行くボールの浮遊感に感動してから、ずっと熱は冷めていない。
身体はそんなに大きくないが、若い頃運動をやっていた関係で、自分より大きな男に飛距離で勝つのが無上の快感となってしまったからだ。

だからゴルフの「飛ばし」に関する情報には、いつも注目している。
ゴルフ雑誌を毎週買って、新しい「飛ぶドライバー」の情報を見逃さないように気をつけている。

思えば最初はスチールシャフトのパーシモンのドライバーだった。
それが、友人の薦めで200年物のパーシモンを使っているという、「高級」なドライバーに替えたら、飛距離が伸びた。
これに味を占めて、少し経ってから貯めた金でクラシックの名器「トミーアーマー945」を買った。
凄く高かったけれど、やっぱりクラシックの名器、弾道も飛距離も期待通りだった。
...そのうちに、メタルヘッドのドライバーが発売されて、「飛ぶ」というのでプロが使い始めた。
半信半疑で手に入れてみて、使ってみたら...本当にパーシモンより飛んだ!
そこでパーシモンからメタルヘッドに替えて飛ばしているうちに、値段は高いがチタンヘッドの方が飛ぶと言う噂が聞こえてきた。
...そこで、巷で評判になっていた230チタンを手に入れて使ってみると...これは飛ぶ!
これこそ最高、と思っていたら、今度はヘッド体積300ccのミズノ300Sと言うのがプロが使って飛ぶ、と評判になった。
...それで300Sを手に入れてみると、本当に飛ぶ!
「これこそ最高!」と気に入って使っていると、間もなく「高反発フェース」とかが評判になり、フェースも大きくなってきた。
... 半信半疑でそれを使ってみると、やっぱり飛ぶ!
...ところが、間もなく高反発フェースとやらがルール違反だというので、使えなくなった。
でも、今度は「高反発より飛ぶ」と言われるドライバーの広告が沢山出て来たので、試しにそっちにしてみると...やっぱり飛ぶ!
...そうしたら、週刊誌なんかのギア情報では「リシャフト」するともっと飛ぶ、というのでやってみた。
...シャフトだけでも結構高かったけれど、確かに元のシャフトの時よりも飛ぶようになった。

...でも最新の情報では、自分のスイングを診断してもらって、自分にあったクラブを組み上げるともっと飛ぶ、と言うので早速ショップに行って測ってもらって、作ってもらった。

...やはり作って良かった。
飛ぶし、曲がらない!

しかし、Tさんは最近一杯飲みながら月を見上げて思うことがある。
クラブを替えるたびに、確かに前より飛ぶようになった...それは実感しているし事実だ。
でも、何時も前に使っていたクラブより飛ぶようになったんだから、単純に前のクラブより飛ぶようになった分を足していけば、今頃は400ヤードぐらい飛んでるはずなんだよな。
...それなのに、パーシモンの頃に回っていたときと、そんなに第2打地点は変わらないんだよな。
不思議だなあ...どうしちゃったんだろう、飛ぶようになった分は。


俺、ゴルフ場にいる狐か狸に化かされているんだろか。それとも、ゴルフの女神さんに からかわれているのかなあ。


あ、そういえばさっき見た本に「最新科学の飛ぶドライバー」とかが...

 

↑このページのトップヘ