ゴルフな人々    (イラストレーター渡辺隆司のブログ)

ゴルフが人生に似てるのか、人生がゴルフに似てるのか... 忘れ得ぬ、ゴルフで出会った人々。

ゴルフ人生で、触れ合いすれ違った人達の、忘れられぬ想いを描き残しておきます。

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「同じ白ティーからやって俺より飛ばすなんてね...」

(なんだよ、結局それが理由かよ。)
本当のところはそれが理由ならしょうがない、と妙に納得して黙って聞いている自分がいた。
会社の同僚から始まって、5年続いた男との別れの場面。
特に熱い会話がある訳でもなく、薄々感じていた事がはっきりとしただけの話。

彼に誘ってもらった事から始めたゴルフ。
すぐに夢中になって、ゴルフ教室でプロの指導を受け、週2回の練習と毎日のストレッチや素振りやジョギングを欠かさないようになった。
元々運動が好きで、学生時代はテニスやバレーボールで優勝経験もあった。
社会人になって運動する機会が無くなり、そういう事に飢えている時にゴルフに出会ったので一遍に熱中してしまったんだと思う。
身体のバネと柔らかさはまだ学生時代の遺産として残っていたので、ボールを打つタイミングと形を身体に覚えさせた後は上達は早かった。
特にインパクトのタイミングをつかんだ後は、プロも驚くくらいにボールがよく飛んだ。
ヘッドスピードもゴルフショップの測定では最高で45まで出た。

女性同士のコンペではいつもドラコンをとるのが当たり前になり、女性用の赤ティーで回るのがつまらなくなった。
会社のコンペや練習場のコンペでも、許されている時はなるべく男性と同じ白ティーからプレーするようになった。
スコアはボギーペース以上には中々ならなかったが、ボールを飛ばす事が気持ち良くてゴルフの誘いは断らなかった。

...彼とのゴルフでも同じティーからプレーするようになり、3回に1回は彼をアウトドライブすると「勝った!勝った!」と喜んでいた。
その頃から彼とのラウンドは少なくなり、一緒に出場するコンペでも同じ組にならないようになった。
自分はゴルフ自体が面白かったので、あまり気にしてなかったんだけれど...ある日、彼が深刻そうな顔で「ちょっと話があるんだけれど...」と言って来た時に、不思議にピンと来た。

「逢うのをやめよう」
その後いろいろと理由を話して、謝った上でこう言った。
「同じ白ティーから打って、俺より飛ばすなんて我慢出来ないんだ」
それが本音かよ。
それが最後の言葉かよ。

ゴルフが理由の別れだけれど、ゴルフがあるから大した痛みも感じない。
さよなら、どうもありがとう。

今度は、私は私より「飛ばす」男をみつけるわ。

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あいつからの年賀状には「謹賀新年」しか書いてない。
もっとも、俺からのだって「賀正」しか書かなかったんだから、お互い様か...

「あんなに仲が良かったのに、一体どうしたの?」なんて、以前一度だけ女房が聞いたことがあったけど、何も言いたくないので黙っていたらそれ以上聞こうとはしなくなった。
女房同士は今までと変わらずに付き合っているようだから、何か聞いているのかもしれないが...

...4年前に二人でダブルスの試合に出るまでは、永久スクラッチを約束したライバルであり親友とも言えた。
「俺たちなら、あのダブルス戦決勝でもいいところに行くぞ」なんて、どちらともなく言い出して参加を決めたある新聞社主催のダブルス戦。
お互いの良い方のスコアをカウントしていくから、予選でもパープレーとか1オーバーがカットになる。
でも、俺たちなら噛み合えばアンダーには絶対なるだろう...そんな自信が二人ともあった。
俺はショットに自信があったし、奴は小技とパットに強かったし...

試合では、どう見ても我々より上手くはなさそうな二人と一緒になり、自信を持ってスタートした。
...が、結果は信じられないくらい噛み合わなかった。
二人一緒に3ボギー、1ダボ...バーディーを二つとっても焼け石に水だった。
我々二人よりそれぞれグロスでは悪い同じ組の二人が、それぞれ80近く叩きながら見事に噛み合って1オーバーでまわったのに対し、我々は二人とも4オーバーでまわって3オーバー...2打足りずに予選落ちとなった。

その夜、二人で残念会をした...口惜しかったためか思ったより酒が進んだ。
「俺が悪かった...お前がOBを打った時に、お前の分も取り返すなんて力が入ってクリークに打ち込むなんて。」
「いや、俺が悪いんだ。 お前のトラブルを見て、無理にバーディー狙いにいって3パットして..」
「いや、俺が悪い。 堅く行くべき所でつい狙ってしまった..」
「いや、悪いのは俺だ...」
「いや、俺の方が悪い..」
...気がついたら、喧嘩になっていた。
なんの拍子にか、「もうお前とはゴルフやらねえ!」「ああ、俺もやりたくねえ!」
売り言葉に買い言葉だった。

そのまま、もう4年になる。
ただ、お中元とかお歳暮で、奴からはゴルフの小物が贈られてくる。
もちろん、俺からも同じだ。

去年のお歳暮には、流行のGPS距離計が贈られて来た...偶然俺から贈ったのも、違うメーカーの距離計だったけど。
なんだか気まずくて、一緒にゴルフする気になれない...が、付き合いが切れる訳でもないらしい。

女房はあきれて見ているのだが...

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「あら...」
物置を整理していたとき、亡くなった義父の残したキャディバッグにカビがついているのを見つけた。
ゴルフ好きだった義父が、最後に使っていたセットを入れたまま物置の片隅にずっと置いてあるものだ。

忙しくてあまりゴルフを出来ない夫は「古いものだし処分しようか」と言うけれど、優しくしてくれた義父が一番の趣味としていたゴルフで、亡くなる直前まで使っていたクラブセットをそう簡単に捨てられる気持ちにはならなかった...もう15年以上になるけれど。

自分もシングルだった生前の義父に、グリップやらスイングやらの基本は練習場に連れて行ってもらって教えてもらったことはあった。
でも、その頃は子育てに忙しくて、ゴルフをやるなんてつもりは全くなかった。
それが、子育ての一段落した3年程前から、スポーツ教室の一つとして始めたゴルフが面白くてしょうがなくなってきて、義父のキャディーバッグに生えたカビが気になったのだ。
...「可哀想に」と思って、バッグを奇麗に拭いて中のクラブがどうなっているか覗いてみた。
ウッドはパーシモンが2本と、小さなメタルウッドが1本、古いリンクスのアイアンセットと、古いピンのパター。
毛糸のヘッドカバーを被せてあったウッドを見ると、ドライバーだけが新品のように奇麗なものだった。
つい引っ張り出して手に取ってみると、意外に軽くシャフトも柔らかく感じる。
パーシモンのドライバーなんて最近見たことないからよくわからないが、なんだかヘッドが普通のよりもっと小さい気が...
でも木目の奇麗な、傷のないドライバー。
...それで思い出した。
亡くなる直前に、入院していた義父を世話していた時に「ゴルフは本当に面白いからやって見なさい」「私のドライバーを使っていいから...」なんて言われたことを思い出した。
「子供の手が離れたらやってみたいですけど、私に男物のドライバーなんて使えませんよー」なんて言って、その話はそれで終わった。

15年以上たって、その小さなパーシモンのドライバーを持ったとき、不思議な気持ちがしたので夫に聞いてみた。
「あのドライバー、お義父さんが使ってみろって言っていたけど、私に使えるのかしら?」
「ドライバー?...そういえば、入院する前に病気で体力が落ちているので、ドライバーを特注で作ってもらったって言っていたなあ...」
「それを使っては2ラウンドしか出来なかったけど..」

夫にそのドライバーを見せると
「ああ、やっぱり!」
「これ、ドライバーを小さく薄く削ってロフトをつけて、シャフトもレディースだよ...それで、本当は3Wか2Wみたいなもんなんだけど、かっこが悪いからって1番のソールをつけているんだ」
...確かにヘッドは小さくて、Green Pro って書いてあるのに、ソールにはHONNMA EXTRA 90 の1というのがついている。
おまけにフェースの反対側にはバックウェイトと言うんだろうか、大きなものがはめ込んである。
シャフトは赤紫の柔らかいもので、何の表示もついていないし、グリップも細い。
「そうだ、おやじの奴...結構高くなったけど、自分が使わなくなってもお前が使えるように特注で作ったんだって言っていたっけ..」

そうか...だから病室であんなこと言ったんだ..

練習場で打ってみると、飛ばないし、難しいし、使える自信は全くないけれど、当たった時に本当に優しい感触が残る。
私のキャディーバッグには、どうせ12本しかクラブが入っていないんだから、これからはこれも入れて行こうと思っている。
ラウンド中に1回でもこれを使って打てば、ゴルフにも自分にも周りにも優しくなれるような気がするから。

...今頃気がついた、お義父さんの最後のプレゼント...どうもありがとう。


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