ゴルフな人々    (イラストレーター渡辺隆司のブログ)

ゴルフが人生に似てるのか、人生がゴルフに似てるのか... 忘れ得ぬ、ゴルフで出会った人々。

ゴルフ人生で、触れ合いすれ違った人達の、忘れられぬ想いを描き残しておきます。

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俺はゴルフってのが大嫌いだった。
自分で(はじめは嫌々)始めるまでは、あんなモノは普通にスポーツをやっていた人間にはチャンちゃらおかしい棒振りダンスだと思っていた。
いい年をした人間が、おかしな格好をして歯の浮く様なお世辞を言い合い、下らない上流階級気取りのこまごまとしたマナーやらルールやらを押し付けて....

しかし、始めてみたら違っていた。

ゴルフというものにハマっちまった人達には、俺と同じように始めてみるまでは「ゴルフなんか大っ嫌い!あんなものやる奴の気が知れん!」なんて人が多い。
そんな男の一人の話。

ある山岳雑誌の編集をしていたTさん。
現役で山や岩をガンガンやっていて、ロッククライマーとしても名が知られていた男。
まあ、ちょっと見でも、髪の毛は短い角刈りだし、体型も首が太くがっちりとしていかにも「硬派の山男」丸出しの風貌だった。
そんな男がひょんな事からゴルフをやることになった。
まあ、周りからも「一度くらいやってみたら...それで嫌だったらやらなきゃいいんだから」なんて相当言われたらしい。

で、非常に不本意だったが...やってみた。

驚いた...
「違うじゃない!」
「これはそんなチャライゲームじゃない!」

それから彼は周りも唖然とするくらい、熱心にゴルフをやるようになった。
...ハマったのだ。
会員権も買った、ホールインワンまでして、その祝賀パーティーまでやった。
多分その頃は、ずっと続けていた毎年の山行よりもゴルフ場に行った回数の方が多かったんじゃないか。
どうしても、それまでのハードなロッククライマーのイメージと合わなかったので、聞いてみたことがあった。
「何でそんなに強烈にハマってしまったんです?」。

「いや、ゴルフを馬鹿にしていたんだけれど、やってみるとこれはロッククライミングと同じだ、って感じたんだ。」

「まず、スタート地点から頂上(目的地)まで、その日の自分の調子、岩の調子、自然条件、なんかを考えながらルートを設定する。」

「それから、どうやってその場所にたどり着けるかをその日の調子によって柔軟に対応して、切り抜ける」

「なにより自然が相手だから、同じコースに何回行っても全く同じ条件には2度とならないから、常に新鮮だし常に違う条件に対応する能力が必要になる。」

「そして、審判が居ないのだから、常に自分に対して厳しくなければならない。」


「だから、ゴルフは面白い...ああ、もっと早く気がつけば良かった!」...

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Kさんは、一人で参加したT県でのオープンコンペで出会ったゴルファーだった。

そのときは私の組は、全員一人参加の4人で組まされていた。
30代の人が一人と、40代が一人、それに私と、その70代後半の年齢と思われるKさん。
7月の少し暑さが厳しいけれど、良く晴れた平日のゴルフ場。
30代40代の二人は、あちこちボールを曲げながらもピンをまっすぐ見て懸命なプレーを続ける。
私は相変わらず大叩きしたりバーディー獲ったりのお祭りゴルフ。
パーだのボギーだのと騒ぎながらのプレーを楽しんでいた。

そんな中で、一人Kさんは静かにマイペースでプレーを続ける。
そして、プレーの合間に何度も青空を眩しそうに見上げる...ボールの行方はあまり気にしていない。
少しして、ふっとため息をついてまた自分のプレーに戻る

昼休みには、それぞれがオープンコンペにどんな風に参加しているか、なんて話題になる。
どの人もゴルフが好きで、余裕は無いもののそれぞれ時間と金の都合をつけては一人でもこうしたコンペに参加している「ゴルフ馬鹿」であると判リ、ますます盛り上がる。
そして、私を始め30代40代の二人ともが、時々奥さんと一緒にオープンコンペに参加したりもするという話になった。
途中で夫婦喧嘩をした人とか、奥さんの方が上手いと言う人まで居たりして...
その話の流れで一人が、それまで会話を静かに聞いていたKさんに「奥様はゴルフをなさらないんですか?」と聞いた。
...

しばしの沈黙の後...「私の家内は暫く前から寝たきりになってしまいまして..」

「あ、すみません! 失礼なこと聞いてしまいまして!」
「いえ、いいんですよ。」
「ずっと私が面倒見ているんですが、週に一回介護の人に来てもらえるので、私はこうして一人でいつでも参加できるようなオープンコンペに出ているんです。」
「家内が元気な頃は一緒にゴルフもずいぶんやりました。」
「...家内は結構上手かったんですが...」


Kさんは誰も何も言えない沈黙の後で、小さな声で独り言のように言った。

「私思うんですよ。」
「男の一番の幸せっていうのは、70過ぎて夫婦で一緒にゴルフ出来ることなんじゃないでしょうか。」

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オープンコンペに参加する女性は、ほとんどが夫婦連れか友達の女性ゴルファーとの二人連れだ。
たまに「お一人さん」で参加する女性も少数ながらいるが、そう言う人は大概上級者で、男と同じティーからやってもまず負けない...学生時代からやっていたとか、アマの試合に出る様な真っ黒に日焼けした女性達だ。


でも、まれにこんな女性もいる。
昨年、茨城県のHカントリークラブのコンペで一緒になったKさん。
ごく普通の奥様のようで、日焼けもあまりしてないし道具だって安物の初心者用レベルのもの。
しかし、ともかくドライバーが良い!
レディスティーから、女性離れしたスイングで高く美しく遠くへ飛ばす。
不思議なのは飛距離も出て、ほとんどフェアウェイを外さないドライバーを打つのに、アイアンやアプローチ、パットは淡々とあっさりプレーしてミスが多く、スコアは全然良くない。
しかも、ショットをミスしても短いパットを外しても、別に悔しがったり悲しがったりもしない。
ホールアウトする時の顔は、スコアに全く関係なく楽しそうに見える。

昼休みに話を聞くと、その50年配のKさん、「学生時代にはソフトをやっていたんだけど、結婚してから子供が巣立った最近まで運動はなにもやっていませんでした。」
「でも、なんだかポカンと空っぽになっちゃったのでいろいろなことを始めてみて、ゴルフに出会ったんです。」

「初めてクラブを振ったとき、昔ソフトをやっていたせいかちゃんと当たった...そのボールが200ヤード近く飛んでいくのを見て、嬉しくて震えが来たんです。...だって、ソフトだったら70ヤードも打つとホームランなんですよ!」
「ゴルフのボールはそのずっと向こうに、どこまでも果てしなく飛んでいく気がして...のめり込みました。」
「他の生活でどんなにトラブルがあっても、ゴルフ場に来てティーショットのボールを青空に向かってかっ飛ばすと、そんなトラブルなんてすっ飛んでしまうんですよ。」
「お金はそんなにかけられないので、プレー代の安い平日に女性一人で参加出来るオープンコンペを月一くらいで楽しんでます。」
「ともかくプレーを速くして、スコアは周りに迷惑をかけないくらいなら大丈夫だと思って...ただ、ドライバーを思い切り打ちたいんです。」と彼女は言う。


彼女はパー3以外の全てのホールで、レディスティーから思い切り青空に向かってフルスイングする。
殆どがナイスショットで、白球は青空の中を飛んで行く。


...小さな声で「気持ちいいーー!」と言うのが聞こえた。

微笑ましくて、なんだか色っぽい...

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