ゴルフな人々    (イラストレーター渡辺隆司のブログ)

ゴルフが人生に似てるのか、人生がゴルフに似てるのか... 忘れ得ぬ、ゴルフで出会った人々。

ゴルフ人生で、触れ合いすれ違った人達の、忘れられぬ想いを描き残しておきます。

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茨城県の、Sゴルフ倶楽部のオープンコンペで一緒になったOさん。

このコースのメンバーだそうで、長身の穏やかで上品そうな白髪の紳士だった。

「このコースにはしょっちゅう来ていますので」と、実に良くコースを知っていていろいろと教えてくれる。

年齢は「もう80ですよ」と言うが、以前はシングルハンデだったとかで、アドレスもフィニッシュもいつも同じように決まっている「いかにも」のベテランゴルファー。

もう二人一緒になった方は40代と50代の男性二人で、共にこのコースのメンバーで月例前の練習に来たのだとか。


こういうオープンコンペでは珍しく、皆いい球筋のボールでよく飛ばす「レベルが高い」ゴルフになった。

何より驚くのが80近いと言うOさんが、よく飛ぶ事。

無理の無い美しいスイングで、若い二人のメンバーと同じくらい...時々は彼等をアウトドライブするくらい。


...ただ、この日の俺は調子が良くて、ドライバーの捉まりも良く、このOさんより50ヤード以上先に行く。


Oさんは昔は月例に出ていたと言うが、今は競技には出ずに健康本意のゴルフだと言っていた。

そのOさん、はじめは「ナイスショット!」「飛ばしますね。」なんて言ってくれていた。が、そのうちに常に50ヤード以上先に行く俺のティーショットを見て笑顔が消えて行った。

常に同じように収まっていたフィニッシュが、少しずつ乱れて来る。

打ち終わった後スッと立っていられず、何歩かよろめくようになる。

トップがオーバースイングになってきて、インパクトで力が入って来る。

飄々として穏やかだった顔つきが、インパクトで鬼の形相になって来る。

仕舞いにはインパクトで声迄出て来る。

右足に体重が残り明治の大砲スタイルになってくる。

フォローで右手が離れ、身体ごと回ってしまう。

ついには身体ごと回って右足が宙に浮き、フィニッシュでは左手一本で頭の上まで振り回してくる。


しかし、ボールは段々右に行ったり左にいったり、天プラしたり...


綺麗に梳かしていた白髪が、乱れてザンバラになり、額に汗が浮かぶ...


「く..飛ばない!」

「ああ、飛ばなくなったなあ..。」


30台40台の二人も、口あんぐりでOさんを見ている。


いや、「飛ばない」って...

80歳近くでそこまで振る人、見たこと無いんですが...

いや、だって普通の80歳って...

世間ではぼけてきたり、寝たきりになったり、徘徊するようになる人も多いって...



Oさん、後半はスコアなんか無視して、全力のフルスイングを通してしまった。

スタート前の紳士の雰囲気はすっかり消えて、髪はザンバラ、シャツはズボンからはみ出し、額からは大粒の汗を流し、スイングはもう....



そして、最後に

「くそーーーー!」。




ああ、本当に

いくつになっても「男」ってやつは...



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綺麗な女性だった。
T県のSゴルフクラブで行われたオープンコンペ。
それぞれ一人参加のゴルファー4人の中の、30代半ば過ぎかと思われる女性の一人参加だった。

真っ黒に日に焼けて筋肉質の身体で、思い切りよくクラブを振り切り、パットは必ずカップをオーバーする。
眩しい程に魅力的に笑う彼女は「私、10年ごとに違うスポーツに熱中するんです」と言う。
その前はサーフィンに夢中だったと言い、2年前からゴルフに夢中だと明るく語る。
贅肉のない身体は良いとして、その日焼け具合はおせっかいながら「お肌の手入れは大丈夫?」なんて心配になるくらい。
ラウンド中は他のことは一切目に入らないくらいゴルフに集中していて、一打一打に本気で一喜一憂する様は、ずっと年上の俺から見ると実に微笑ましい。
この日は調子が良かったらしく、難しいアプローチを上手く寄せたり、長いパットを沈めたりして気分がどんどん乗っていくのがよくわかる。
ティーショットも尻上がりに良くなり、飛距離も出てきてる。
私以外の男二人はスコアでも飛距離でも負けている(もちろんレディースティーからだけど)。
アウトを無難にこなし、インに入っても尻上がりに調子が良くなって行く彼女のゴルフは、このコースで難しいと言われている、上がり数ホールで連続パーを続ける。
最終ホール、グリーンをオーバーした下りのアプローチを1メートルほどに寄せた。
笑う余裕も無くなった緊張した顔で、上りのパーパットをしっかり打ち切った瞬間。
「やったああ! ベストスコア大幅更新でーーす!!」


風呂から上がって、オープンコンペのパーティーが行われるレストランに上がっていくと、彼女が廊下の片隅でケータイでメールを打っている。
パーティーの行われる席へと彼女を誘うと、「今、友達にベストスコア更新したって、メールを打ってるんです」と嬉しそうに言う。
先に席に着いて彼女の様子を見ていると、嬉しそうにメールを打っていた彼女が、急に「あ...」と声を出した。

やがて席にやってきた彼女...
「長いつきあいの友達に、ベストスコアが出た!ってメールしたんですよ。」
「そしたら彼女、今週結婚するって返事を返してきたんです。」

んん。

...ベストスコアの女の幸せ、結婚する女の幸せ。



「大丈夫、貴女は十分魅力的ですよ。」じゃ、励ましにも慰めにもならないか...

勿論そんなこと言わなかったけど。

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俺はゴルフってのが大嫌いだった。
自分で(はじめは嫌々)始めるまでは、あんなモノは普通にスポーツをやっていた人間にはチャンちゃらおかしい棒振りダンスだと思っていた。
いい年をした人間が、おかしな格好をして歯の浮く様なお世辞を言い合い、下らない上流階級気取りのこまごまとしたマナーやらルールやらを押し付けて....

しかし、始めてみたら違っていた。

ゴルフというものにハマっちまった人達には、俺と同じように始めてみるまでは「ゴルフなんか大っ嫌い!あんなものやる奴の気が知れん!」なんて人が多い。
そんな男の一人の話。

ある山岳雑誌の編集をしていたTさん。
現役で山や岩をガンガンやっていて、ロッククライマーとしても名が知られていた男。
まあ、ちょっと見でも、髪の毛は短い角刈りだし、体型も首が太くがっちりとしていかにも「硬派の山男」丸出しの風貌だった。
そんな男がひょんな事からゴルフをやることになった。
まあ、周りからも「一度くらいやってみたら...それで嫌だったらやらなきゃいいんだから」なんて相当言われたらしい。

で、非常に不本意だったが...やってみた。

驚いた...
「違うじゃない!」
「これはそんなチャライゲームじゃない!」

それから彼は周りも唖然とするくらい、熱心にゴルフをやるようになった。
...ハマったのだ。
会員権も買った、ホールインワンまでして、その祝賀パーティーまでやった。
多分その頃は、ずっと続けていた毎年の山行よりもゴルフ場に行った回数の方が多かったんじゃないか。
どうしても、それまでのハードなロッククライマーのイメージと合わなかったので、聞いてみたことがあった。
「何でそんなに強烈にハマってしまったんです?」。

「いや、ゴルフを馬鹿にしていたんだけれど、やってみるとこれはロッククライミングと同じだ、って感じたんだ。」

「まず、スタート地点から頂上(目的地)まで、その日の自分の調子、岩の調子、自然条件、なんかを考えながらルートを設定する。」

「それから、どうやってその場所にたどり着けるかをその日の調子によって柔軟に対応して、切り抜ける」

「なにより自然が相手だから、同じコースに何回行っても全く同じ条件には2度とならないから、常に新鮮だし常に違う条件に対応する能力が必要になる。」

「そして、審判が居ないのだから、常に自分に対して厳しくなければならない。」


「だから、ゴルフは面白い...ああ、もっと早く気がつけば良かった!」...

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