ゴルフな人々    (イラストレーター渡辺隆司のブログ)

ゴルフが人生に似てるのか、人生がゴルフに似てるのか... 忘れ得ぬ、ゴルフで出会った人々。

ゴルフ人生で、触れ合いすれ違った人達の、忘れられぬ想いを描き残しておきます。

img_0-2
綺麗な女性だった。
T県のSゴルフクラブで行われたオープンコンペ。
それぞれ一人参加のゴルファー4人の中の、30代半ば過ぎかと思われる女性の一人参加だった。

真っ黒に日に焼けて筋肉質の身体で、思い切りよくクラブを振り切り、パットは必ずカップをオーバーする。
眩しい程に魅力的に笑う彼女は「私、10年ごとに違うスポーツに熱中するんです」と言う。
その前はサーフィンに夢中だったと言い、2年前からゴルフに夢中だと明るく語る。
贅肉のない身体は良いとして、その日焼け具合はおせっかいながら「お肌の手入れは大丈夫?」なんて心配になるくらい。
ラウンド中は他のことは一切目に入らないくらいゴルフに集中していて、一打一打に本気で一喜一憂する様は、ずっと年上の俺から見ると実に微笑ましい。
この日は調子が良かったらしく、難しいアプローチを上手く寄せたり、長いパットを沈めたりして気分がどんどん乗っていくのがよくわかる。
ティーショットも尻上がりに良くなり、飛距離も出てきてる。
私以外の男二人はスコアでも飛距離でも負けている(もちろんレディースティーからだけど)。
アウトを無難にこなし、インに入っても尻上がりに調子が良くなって行く彼女のゴルフは、このコースで難しいと言われている、上がり数ホールで連続パーを続ける。
最終ホール、グリーンをオーバーした下りのアプローチを1メートルほどに寄せた。
笑う余裕も無くなった緊張した顔で、上りのパーパットをしっかり打ち切った瞬間。
「やったああ! ベストスコア大幅更新でーーす!!」


風呂から上がって、オープンコンペのパーティーが行われるレストランに上がっていくと、彼女が廊下の片隅でケータイでメールを打っている。
パーティーの行われる席へと彼女を誘うと、「今、友達にベストスコア更新したって、メールを打ってるんです」と嬉しそうに言う。
先に席に着いて彼女の様子を見ていると、嬉しそうにメールを打っていた彼女が、急に「あ...」と声を出した。

やがて席にやってきた彼女...
「長いつきあいの友達に、ベストスコアが出た!ってメールしたんですよ。」
「そしたら彼女、今週結婚するって返事を返してきたんです。」

んん。

...ベストスコアの女の幸せ、結婚する女の幸せ。



「大丈夫、貴女は十分魅力的ですよ。」じゃ、励ましにも慰めにもならないか...

勿論そんなこと言わなかったけど。

img_0-1
俺はゴルフってのが大嫌いだった。
自分で(はじめは嫌々)始めるまでは、あんなモノは普通にスポーツをやっていた人間にはチャンちゃらおかしい棒振りダンスだと思っていた。
いい年をした人間が、おかしな格好をして歯の浮く様なお世辞を言い合い、下らない上流階級気取りのこまごまとしたマナーやらルールやらを押し付けて....

しかし、始めてみたら違っていた。

ゴルフというものにハマっちまった人達には、俺と同じように始めてみるまでは「ゴルフなんか大っ嫌い!あんなものやる奴の気が知れん!」なんて人が多い。
そんな男の一人の話。

ある山岳雑誌の編集をしていたTさん。
現役で山や岩をガンガンやっていて、ロッククライマーとしても名が知られていた男。
まあ、ちょっと見でも、髪の毛は短い角刈りだし、体型も首が太くがっちりとしていかにも「硬派の山男」丸出しの風貌だった。
そんな男がひょんな事からゴルフをやることになった。
まあ、周りからも「一度くらいやってみたら...それで嫌だったらやらなきゃいいんだから」なんて相当言われたらしい。

で、非常に不本意だったが...やってみた。

驚いた...
「違うじゃない!」
「これはそんなチャライゲームじゃない!」

それから彼は周りも唖然とするくらい、熱心にゴルフをやるようになった。
...ハマったのだ。
会員権も買った、ホールインワンまでして、その祝賀パーティーまでやった。
多分その頃は、ずっと続けていた毎年の山行よりもゴルフ場に行った回数の方が多かったんじゃないか。
どうしても、それまでのハードなロッククライマーのイメージと合わなかったので、聞いてみたことがあった。
「何でそんなに強烈にハマってしまったんです?」。

「いや、ゴルフを馬鹿にしていたんだけれど、やってみるとこれはロッククライミングと同じだ、って感じたんだ。」

「まず、スタート地点から頂上(目的地)まで、その日の自分の調子、岩の調子、自然条件、なんかを考えながらルートを設定する。」

「それから、どうやってその場所にたどり着けるかをその日の調子によって柔軟に対応して、切り抜ける」

「なにより自然が相手だから、同じコースに何回行っても全く同じ条件には2度とならないから、常に新鮮だし常に違う条件に対応する能力が必要になる。」

「そして、審判が居ないのだから、常に自分に対して厳しくなければならない。」


「だから、ゴルフは面白い...ああ、もっと早く気がつけば良かった!」...

img_0

Kさんは、一人で参加したT県でのオープンコンペで出会ったゴルファーだった。

そのときは私の組は、全員一人参加の4人で組まされていた。
30代の人が一人と、40代が一人、それに私と、その70代後半の年齢と思われるKさん。
7月の少し暑さが厳しいけれど、良く晴れた平日のゴルフ場。
30代40代の二人は、あちこちボールを曲げながらもピンをまっすぐ見て懸命なプレーを続ける。
私は相変わらず大叩きしたりバーディー獲ったりのお祭りゴルフ。
パーだのボギーだのと騒ぎながらのプレーを楽しんでいた。

そんな中で、一人Kさんは静かにマイペースでプレーを続ける。
そして、プレーの合間に何度も青空を眩しそうに見上げる...ボールの行方はあまり気にしていない。
少しして、ふっとため息をついてまた自分のプレーに戻る

昼休みには、それぞれがオープンコンペにどんな風に参加しているか、なんて話題になる。
どの人もゴルフが好きで、余裕は無いもののそれぞれ時間と金の都合をつけては一人でもこうしたコンペに参加している「ゴルフ馬鹿」であると判リ、ますます盛り上がる。
そして、私を始め30代40代の二人ともが、時々奥さんと一緒にオープンコンペに参加したりもするという話になった。
途中で夫婦喧嘩をした人とか、奥さんの方が上手いと言う人まで居たりして...
その話の流れで一人が、それまで会話を静かに聞いていたKさんに「奥様はゴルフをなさらないんですか?」と聞いた。
...

しばしの沈黙の後...「私の家内は暫く前から寝たきりになってしまいまして..」

「あ、すみません! 失礼なこと聞いてしまいまして!」
「いえ、いいんですよ。」
「ずっと私が面倒見ているんですが、週に一回介護の人に来てもらえるので、私はこうして一人でいつでも参加できるようなオープンコンペに出ているんです。」
「家内が元気な頃は一緒にゴルフもずいぶんやりました。」
「...家内は結構上手かったんですが...」


Kさんは誰も何も言えない沈黙の後で、小さな声で独り言のように言った。

「私思うんですよ。」
「男の一番の幸せっていうのは、70過ぎて夫婦で一緒にゴルフ出来ることなんじゃないでしょうか。」

↑このページのトップヘ