ゴルフな人々    (イラストレーター渡辺隆司のブログ)

ゴルフが人生に似てるのか、人生がゴルフに似てるのか... 忘れ得ぬ、ゴルフで出会った人々。

ゴルフ人生で、触れ合いすれ違った人達の、忘れられぬ想いを描き残しておきます。

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自分では温厚な方だと思っている。
そんなに喧嘩したり、他人と言い合いをしたり、悪口を言ったりするのは好きじゃない。
誰とでも普通につき合えると思っていた。

でも、人を本当に不愉快にすることをする人っているもんだ。

...此処のところ、ゴルフの調子が良くなってきているのを実感していた。
課題だった「ショットのつながり」が何となく理解できてきて、馬鹿な大たたきをしなくなった。
参加している主婦ばかりのサークルの定期的なコンペでも、平均的に上位にくるようになっていた。
そのサークルに入って何年にもなるので、今年はそこの部長をやることになった。
部長といっても、要するにサークルの雑用係であり、年4回の定期的なコンペのコース選びとか、予算の交渉とか、日にちの決定なんかをやらなければならない。

そして今年最後のコンペの日程を決めるときに、それがおこった。

自分が用事で留守にしている間に何回か電話があったらしいのだが、全く部長の自分が知らない間に日程が他の幹事の人の意向で決まっていた。
その人は何時も自分の意見を強引に通す人で毛嫌いしている人も多かったけれど、まさかこんな事迄自分勝手に決めるとは思っていなかった。
...その日は、以前から決まっていた家の行事があり、自分が絶対に外せない日。

家の電話にはあったらしいが「留守だったので自分が決めた」とのこと。
携帯に電話くれたら、よかったのに...せめてメールでも。

そうしたら、メールで「決まったんだからしょうがない。いないのが悪い。」と来た。

...口惜しかった。
ずっと練習してきて、今年の集大成にするつもりのコンペだった。
一応部長という立場で、雑用をやってきたのに、自分抜きで何の連絡も無く決められた。
メールの文を読んで、自分でも信じられないくらいに頭に来た。

夜も眠れなくて、主人の晩酌につき合って、飲めないお酒を飲んだ。
...冷たいお酒がおいしく感じて...つい飲み過ぎてしまった。
なんだか目が回ってきて...気がついたら階段から落っこちていた。

朝起きたら、右手が上がらない。
おでこにも擦り傷と、こぶができていた。
右肩が痛いので整形外科を訪ねたら、「関節には異常はないが肩の腱が切れているみたいだ」って。
「治るのは..?」
「半年くらいかかるかなあ」

いたくて右手は水平より上がらない。
せっかくの調子の良かったゴルフも半年以上できなくなった。
楽しみだった週一回の練習も、当分お休み。

本人には悪意がないのかもしれないが、人を怒らせるのが得意な人っているのかもしれない。
自分でもこんなに腹が立つとは思っていなかったけど、半年は頭を冷やすのには十分すぎる時間。
でも、半年たって自分のゴルフはどうなっているんだろうか...
ちゃんと右手は元通りに動くんだろうか...

ああ、お酒に弱いのはわかっていたんだから、あんなに(といってもおちょこに4杯くらい)飲まなければよかった。

...ああ、口惜しい。

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Aさんがそのコースに来たのは15年ぶりだった。

プレーするチャンスはその間に何回もあったのだけれど、あえてそのコースに行くことは避けていた。
そのコースはT県の奥にある、チャンピオンコース。
コースは良いのだけれど、都内からは遠いのでそれほど知られたコースという訳ではない。

15年より前、Aさんは此処のメンバーだった。
丁度バブルの始まる前で、ゴルフに熱中しだしたAさんは競技ゴルフをしたくてこのコースを手に入れた。
インターからも遠くて、都内からは行きにくかったこのコースはコース自体の評価の割にはまだ値段は安かった。
でも、地形に恵まれてトリッキーなホールは少なく、コースレートは73に近いこのコースは「知る人ぞ知る」の名コースだとAさんは思っていた。
そしてそれから10年以上競技ゴルフに熱中したAさんは、ハンデは5に近いシングルになり、クラブ競技で名の知れたゴルファーになった。

そのAさんには、このコースに通う楽しみがもう一つあった。
それは帰り道をいろいろと変えて楽しんでいるうちに見つけた、地元のおばあさんのやっているお土産屋。
「土産」といっても、それは自分でとってきた山菜や、茸、自分で作っている「米」や「野菜」「果物」、それに自家製の「みそ」や「漬け物」みたいなものだったけど、どれもが安くて驚く程旨かった。
春は野生のタラの芽や、ワラビ、ゼンマイ...
夏から秋は珍しくて旨いいろいろな名も知らないキノコ...これは旨い食べ方迄教えてもらって、酒の摘みにはどれも絶品だった。
そして新米や、果物類も...
毎週のようにコースの帰りに立ち寄っていたAさんは、すっかりそのおばあさんと仲良くなり、おばあさんはいつも売り物じゃあないおまけをいっぱいつけてくれるようになった。
自分達が食べている浅漬けのお新香とか、数の多く取れない豆類や芋など...


それが15年前、Aさんは仕事を変わったために収入が減り、どうしても必要があってこのコースを手放した。
何年かはゴルフどころじゃない生活が続き、またゴルフが出来るようになったのは7年ほど前から。
今は自分のコースを持たずに、あちこちの安いところを探してプレーしているが、そのコースだけにはどうしても行く気になれなかった。
かってメンバーとして充実したゴルフライフを送っていた思い出がある分だけ、近づけなかった。

15年ぶりにプレーしたかってのホームコースは、木々が大きくなり、記憶にある風景とは少し変わっていた。
メンバーも殆ど入れ替わったらしく、知った顔には一人も会うことはなかった。
(このコースも、この近辺のコースと同じように預託金の返還が出来ずに倒産し、経営が変わった事はニュースで知っていた。)



プレーが終わると、このコースに再び来ることでずっと気になっていたもう一つの気掛かり...帰り道の、あのお土産屋に立ち寄った。


...そこには雑草に囲まれて、半分朽ちている店の残骸があるだけだった。
考えてみれば、あの頃から15年...もうおばあさんが店にいるはずもなかった。
別れも言わずに、ある日立ち寄らなくなった自分のことを、おばあさんは気にしていただろうか?
いつも自分用に用意してくれていたおまけを、おばあさんはいつ迄用意してくれていたんだろうか?


心残りが、自分を責める...


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Tさん夫婦は、車を捨てた。

夫の定年に伴って、夫とこれからの生活を話し合った中で結論が一致したから。
少ない退職金は家のローンを完済したら、たいして残らなかった。
年金をもらえる年齢迄の生活は、私がパートを続けることと夫もとりあえずの年間契約の仕事を続けることで何とかなりそうだ。

でも、収入は半分くらいになる。
そこで何が切り詰められるかを話し合った。
一致したのが車...小さな大衆車なんだけど、軽じゃあないんで車検や税金、駐車場代金などが重過ぎた。
おまけに、車を使うことはゴルフへ行くことが中心で、買い物やちょっとした旅行なんかでは殆ど使ってなかった。
車は売るとして...じゃあ、ゴルフもやめる?

これは難しかった...月に1回くらいしかゴルフには行ってないけど、今では夫よりもスコアはいいし、近所の練習場も安いので週に一度くらい友達と練習するのもいい気分転換になる。
勿論練習そのものより、気の置けない仲間達とのおしゃべりの方が中心なんだけど。
...夫も、ずっと上手くならないけれどゴルフは好きらしい。
「残りの人生にだって、月に一度の楽しみは必要だ」、そんな風に意見が一致した。

で、結論は「車を売って、電車でゴルフは続けよう。」
(でも、車は古過ぎて売る事が出来ず、廃車にするしかなかった。)

仲間とのコンペなんかでは相乗りさせてもらうけれど、夫とゴルフに行くときは電車を利用して行くことにした。
当然、駅迄送迎バスで迎えに来てくれるコースや、バスの便があるコースばかりにしか行けないけれど...これが結構楽しい。
クラブは宅急便で送ってしまうから荷物も少なくて、朝なんかはまるで遠足気分。
通勤の人達と同じ方向には私達が行ける様なゴルフ場は無いから、朝乗る電車は殆ど座れるし。
郊外に出てから電車の中で朝食をとるのだが、おにぎりを食べながらお茶を飲み、窓を流れ行く景色を見ていると、季節の移ろいも実に良く感じることが出来る。
車を使っていた時には感じられなかった贅沢感だ。
帰りも、夫は車の運転を考えなくて済むので、実に寛いで缶ビールを飲むことが出来ると喜んでいる。

車がある間は全くする事のなかった「のんびりとした鉄道の旅」...これ、本当は自分が凄くしたかったことなのかもしれない。今は、月に一度「遠足気分で鉄道で旅に出る」のが楽しくてしょうがない。


...そしてその上ゴルフ迄できるんだから、なんにも文句はない。

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