ゴルフな人々    (イラストレーター渡辺隆司のブログ)

ゴルフが人生に似てるのか、人生がゴルフに似てるのか... 忘れ得ぬ、ゴルフで出会った人々。

ゴルフ人生で、触れ合いすれ違った人達の、忘れられぬ想いを描き残しておきます。

img_0-64


1日2千円か...
それで生活しないといけない。

会社が傾いたために、早期退職に応じて転職した夫の収入は半分近くになってしまった。
その給料は、家のローンと保険や年金や税金、電気、ガス、水道、それにケイタイの電話代、少なくなったとはいえ子供のためのお金で殆ど全部消えてしまう。
かろうじて残った2万円弱のお金が夫の小遣いとなる。

それに私のパート代が月に6万円。
それが生活費。
単純計算で1日2千円。

とてもゴルフに行くお金は出ないなあ...

昨年の後半は、夫は少ない小遣いをパチンコで増やして、月に1回か2回ゴルフに行ってたようだけど、一度小遣いを全て擦ってしまってからそれもやらなくなったようだ。
もう2ヶ月ゴルフに行ってないけれど、少しずつお金を貯めてはいる。
5千円程で一週間分のおかずを買い込み、全然お金を使わない日を作ると月に1万円程が貯まる計算だ。
これなら2ヶ月に一回、遠いコースの昼食付き5000円以下の所とか、早朝や薄暮の割引プランで二人でラウンド出来る。
夫も、自分の小遣いから、少しずつ溜めてゴルフに行く気でいるし。

夫と、「この暮らしって生活保護の金をもらっている人達より少ない収入で暮らしてるんだよなあ...」なんて言い合って笑っているけれど、真面目に働いてこんな暮らしなんて絶対おかしいと思う。
周りを見ても、以前のゴルフ仲間で昔と同じようなペースでゴルフに行っている人は3分の1くらいになってしまった。
半分以上の人達はパートやバイトや、資格を取って働いたりでゴルフをする時間がなくなったと言っている。
その働いたお金は、ゴルフではなく生活のために使っていると言うし...

いつまでこんな時代が続くのかなあ。
もし学費にお金がかかる子供がいたら、もう生活が行き詰まっていたかもしれない...こんな時代に若い人が子供を産まなくなっているのはよくわかる。
それでも、夫と「またゴルフに行きたいね」ってよく話す。
晴れた日にゴルフを思いっきり楽しめる日が来たらこんな苦労も報われるし、こんなことが笑い話になるのになあ...

1日2千円以下で...そうして、もう少しお金が貯まったら夫とゴルフに行ける。
2ヶ月に一度の楽しみが、きっと生きて行く元気と希望を与えてくれる...上手くなることはないだろうけれど、その一打一打の楽しみは以前よりずっと深くなっているように思うなあ...

img_0-63

「もうシニアパブに出られる年齢なのか...」
Kさんは最近、そんな風に考える事が多くなった。

大都市近郊の土地持ちの家に生まれたおかげで、ずっと今まで生活の心配なんてした事もなかった。
いくつかのアパートを持ち、親の代からその家賃収入と地代の収入で、生活は十分やって行けた。

そして大学を出てから、貸した土地に建てられたゴルフ練習場に出入りするようになって、ゴルフにハマった。
面白かった。
裕福な家に生まれて苦労も知らなかったから、どうも運動部のがつがつした感じが苦手で、あまり運動はしていなかった。
でもゴルフを始めてみると、やればやるだけ上達するのが面白くて、毎日練習場で練習するようになった。
仕事は親を継いで大家としての仕事をやっていればよく、時間も金も十分あった。
親から名門のコースを受け継ぎ、新設のいいコースにも2つばかり入会して競技ゴルフに目覚めた。
...シングル入りしてからはますますゴルフに熱中して、「そろそろ結婚したらどうだ」なんて言う親の声も全く耳に入らなかった。
やがてハンデも5下になり、クラブ競技の入賞の常連になり、クラブ対抗の代表選手にも毎年選ばれるようになった。
面白かった。
毎日毎日ゴルフが中心の生活で、楽しくてしょうがない生活が続いた。
腕は確実に上がり、いくつかの名誉も得る事が出来た。
生活のこまごまとした事は母親に任せきりだった...何時しか親も結婚の事は言わなくなった。
...その母親が2年前に亡くなった。
そうか...もう、シニアパブに出られる年齢なのか..。

同じ年代の男達は、孫の話をする事が多くなった。
自分がゴルフしかしてなかった時に、彼らは結婚し、子供を育て、その子供が結婚し、孫が生まれ...
自分は、その間に恵まれた環境に浸かってゴルフをしているだけだった。
...自分はひょっとして取り返しのつかない、無駄な人生を歩んでしまったんじゃないか?
ただ、人生を浪費してしまっただけなんじゃないか?


...いや、今は夜だからそんな事を考えるんだ。

明日の朝になったら、またきっと次にプレーするコースの攻略法と、もっと飛ばすために仕入れたニュードライバーの事で頭がいっぱいになって、自分の選んだ生き方を後悔する暇なんて絶対にないはずだ。
また次のゴルフだって、絶対に孫の事話すより面白くなるに決まっている。

過ぎた日はもう帰らないんだし。


img_0-62

Sさんは、20年くらい前からゴルフを始めた。
なんだかチャラチャラしているように見えたし、金もかかりそうだったし、周りにもあまりやっている人の話を聞かなかったから、30半ばを過ぎるまでゴルフには縁がないと思ていた。

それが、勤め先の会社の人事異動に伴って、仕事でゴルフをすることが必要になってしまった。
今まで縁がなかった「接待ゴルフ」っていう奴だ。
...仕事に関係しているんだから、無様な姿をさらすわけにもいかない...あわてて近くの練習場のプロのレッスンを受けて、必死に練習した。
ところが、ゴルフって奴は簡単に上達するもんじゃなかった。
それに、レッスンプロの感覚的な言い回しが今ひとつ理解出来なかったし、体の動きも納得出来ない事が多かった。

元々が理数系の出身のSさんは、ゴルフスイングを科学的・合理的な理屈から理解しようと、本屋に行ってレッスン書やゴルフ雑誌...週刊誌、月刊誌、季刊誌、を買い集めて勉強を始めた。
練習場に行かない時には、夜遅くまでそんな本を読みあさった。

その結果、一年もせずに100を切るところまでは上達できた。
...が、そこからが難しかった。
上手く行けば90を切るかどうか、失敗すると100を越えるか、という状態が10年以上続いた。
その間も、ゴルフ雑誌のレッスン記事は欠かさず読んで勉強し、練習し、実戦した。
それでもやっぱり、うまくいったり、いかなかったり...
でも、仕事と言う面では努力が報われて、接待ゴルフはほとんど失敗なくやり通すことが出来た。
90から100くらいのスコアが、どんな相手に接待してもされても無難なところだったらしい。

Sさんは、ゴルフ雑誌のレッスン記事が役に立ったと思っている。
バンカーも、アプローチも、パットも、みんな上手くいかない時に読んだレッスン記事に助けられた。
(ただ、一つ上手くいくと一つ違う問題が出て来て、読み重ねたレッスン記事が自分の力の蓄積になっていないのが不思議だ)
だから、どの本にも自分を助けてくれた「ゴルフの真理」が載っているような気がして、雑誌を捨てられない。

はじめは部屋や廊下に積んでいたが、奥さんに「邪魔だから捨てる」とさんざん文句を言われた。
それで、狭い庭に一寸大きな物置を買って、そこに読んだ雑誌を置いてある。
ほぼ20年分、一冊も欠けてはいないはずだ。
だが心配なのは、もうそろそろこの物置が一杯になりそうなこと。
他にもう一つ物置を建てるような場所はないし、そうなったらどうしよう...

古い本から処分するしかないんだろうか...それとも...

今では年に数回しかゴルフに行けないけれど、これからの時間古い雑誌を読み返して楽しむのも「自分のゴルフライフ」だと、Sさんは思っているんだけど。

↑このページのトップヘ