ゴルフな人々    (イラストレーター渡辺隆司のブログ)

ゴルフが人生に似てるのか、人生がゴルフに似てるのか... 忘れ得ぬ、ゴルフで出会った人々。

ゴルフ人生で、触れ合いすれ違った人達の、忘れられぬ想いを描き残しておきます。

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世間では「アラフォー」なんて呼ばれている。
立派な業績を上げている訳ではないけど、不況でもなんとかつぶれないでいる会社に勤めて20年。

上司の勧めでゴルフを始めたのが15年程前。
まあ、上手くもなく下手でもなく、90前後で回れるようになってはいる。

今は会社関係のゴルフは、年に1−2回だけ...仕事でも顔を合わせている人とのゴルフは、いろいろと付き合いが面倒になるのであまりやらない。
5年くらい前に、安いコースのメンバーになって、時々月例にも出るようになった。
もちろんCクラスだけれど、そこで同じ女性のメンバーと回るのは楽しい。
他に、平日に休めるときはオープンコンペにも出て、違うコースを楽しんでいる。
独りで生きるのに慣れているし、独りでコースに行くのも慣れている。

最近やっと、アイアンの番手別の飛距離が安定してきて、おまけにアプローチに開眼した。
ドライバーは、それほど飛ばないけれど方向はいい。
だから、もうすぐBクラスに上がれるかもしれない、と気合いが入っているんだけれど...

親からは「結婚しないつもり?」と電話が来るし、会社でも上司が「いい男がいるからお見合い」しないかと言って来る。
なんだか「雰囲気」が独りでゴルフに行くのを、後ろめたいことをしているような気にさせる。
結婚しないと決めている訳ではないけれど、今はゴルフより興味が湧くような男が周りにいない...ゴルフに行くより楽しいデートだったら勿論そっちに行くんだけれど、そんなことが無いんだからしょうがない。

今の季節、コースに行って空を見上げるのが好きだ。
不思議なことに、都会じゃ一日に一回も空を見上げることが無い日なんて普通なのに、コースに出ると一球打つたびに空を見上げる。
空の色、雲の色、空の広さ、遠くの山々、今の季節なら群れ飛ぶ赤とんぼ、とにかく空を見上げるのが好きだ。

そしてその中でも一番好きなのが、「飛行機雲」を見ること。
青い空を切り裂くように線を引く飛行機雲を見つけると、おもわず歓声を上げてしまう。
くっきりと細い線のままだったり、あっという間に広がって大きくなったり、すぐにぼやけてしまったり、いつまでも同じ形で残っていたり、時にはいろいろな形で交差したり...
打つのを忘れて見入っていたりすることもある(他人には笑われるけど)。



...タイムリミットがあるんだよ...そういう風に言われる年になって、ゴルフに逃げているのかな。
飛行機雲の形が、何かの占いになるんだとしたら、私はその占いを信じてみる気があるんだけどなあ...

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オープンコンペに参加する楽しみは、コースとの出会いとか、豪華な賞品とか色々あるけれど、一番のものは「人との出会い」なんじゃないかと思う。
オープンコンペに一人で申し込むと、多くの場合は一人で申し込んだ人同士でパーティーになる。
たいていの場合一人で申し込む人は、なによりゴルフに熱中していて、自分のコースがなくても、時間が自由にならなくても、お金が沢山使えなくても、何とかゴルフをして上手くなりたい、楽しみたいという気持ちを持った人だ。
最近は女性でもそういう人が増えて、懸命にプレーしている姿が微笑ましい。

だが、ごく希に、とんでもない人と同じ組になることもある。
前に描いた「怒れる男」もそうだったけど、このT県のKカントリークラブのオープンコンペで一緒になった男もそんな一人。
年は60前後か...朝の挨拶をしたときに、ろくな返事をしなかった時に「あれ? この男...」と思った。
前の「怒れる男」もそう、こういう類の男は挨拶の返事がきちんとしていないか、生返事なことが多い...そして、自分の名前もはっきり言わない。

ティーショットを打った後、他の人はすぐにカートに乗って待っていたが、この男アイアンをつかんで「歩くから..」と言って、一人で歩き出す。
自分でクラブを持って歩き出すくらいだから、プレーに慣れている人とは思うが、以後会話は一切なし。
飛ばない、あまり上手くない(良くてハンデ10くらいか)...しかし、自分の飛距離を把握しているためか、一番飛んでない自分のボールの所に行くと、パー4でもすぐに打ってしまう。
グリーン側に打ち込むこともしばしば(もちろんオンはしないが)。

そこまではまあ良いのだが、自分のボールを打つとサッサとグリーンに向かって歩いていく。
グリーンが空いてこちらが打とうとしても、その男がフェアウェイの端を歩いているので、何度も「打ちますよーー!」と声を掛ける。
当然、腕に自信のない人はその男のいるところと反対側のラフに打ち込むことが多くなる。
俺が打つときには、グリーンのすぐ横で待っているので、ついその反対側に外すことが多くなる。

コンペなので、ショートホールなどで待ち時間が出来ると、その男はカートに載っている我々から離れて、やたらに携帯電話を掛ける。
ゴルフに来て、何でそんなに沢山ケータイで話すことがあるんだと思うくらいに、電話しっぱなし。
やっと側に来たかと思うと、「遅い!」「何でこんなに詰まって居るんだ!」と怒った後、またケータイ。
他の3人は黙って顔を見合わせるばかり。
とうとう彼とは会話らしいモノは全くなく、ハーフ終了...彼のスコアはボギーペースといったところ。
...ハウスにつくと、その男いきなり「プレーが遅いのでハーフでやめる。」

残った3人、食事をとりながら「何なんでしょうあの人」「初めてですね、ああいう人と一緒になったの」「こんないい天気なのに...それなら来なければ良かったのにね」

ハーフにかかった時間2時間20分...コンペならこんなものだと思うけど。

オープンコンペ...殆どの人はいい人だけど、運悪くこういう人と一緒になることもある...そんな時はナイスショットがディポット跡に入ったみたいなもんだと思って、諦めましょ。

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プロになっても試合に出られない者や、プロを目指す者、腕試しをしたい者などが参加するミニツアーは、日本でもあちこちで開催されている。
基本はプロないしはプロ宣言した者は5万円前後の参加料を払って、アマの参加者は1−2万円を払って払って参加して、集まった金が賞金となりそれを「プロ参加者」が取り合うという仕組みだ。
大体優勝すれば100万円くらいが手に入る。
賞金を貰えるのは3位くらいまでで、本当に生活と夢を賭けた一日勝負だ。

かなり前にある新聞社の企画で、何回かこんな試合に体験参加したときの話。

ある試合で一緒になったのは、若い二人(二十代のプロもしくは研修生)と、30代の男性一人。
若い二人は、もしアマだったらスクラッチからプラスハンデになるくらいの腕前...しかし、プロとしてはレギュラーツアーに出場出来ないレベルというところ。
もう一人の30代の男性は、真剣さと気迫は十分に感じるのだけど腕は自分と同じくらいで、プロレベルとはまだとても言えない。
しかし、一打一打に対する真剣さは、常識外れとも言える程の迫力を感じた。

ミニツアーの試合は自分が出した金を取るか取られるかの緊張感があるために、やたらとプレーが遅い..,この日の試合は前半で3時間を軽く超えていた。
そのために待ち時間に色々と話す機会があり、彼の話を聞くことが出来た。

...それは、まるで安っぽい虚構の小説のような話だった。
彼は大学を出てから就職がなかなか上手くいかずに、結局就職できたのはある有名な消費者金融会社だったという...いわゆるサラ金だ。
とても好きな仕事ではなかったけれど、給料は良かったので真面目に働いていたという。
やがて仕事に慣れて来ると責任を持たされる仕事をやらされることになり、支払いの遅れている人の取り立てがメインとなった。
その受け持ち地区の中に、支払いが遅れがちな、彼の祖母くらいのおばあさんがいた。
でも、その支払いもいまのサラ金法ができる前の話で、たった10万借りたのに、もう20万以上返していたんだとか...しかし、一度に元金全部を支払えないので利息だけを支払っている結果となり、いつまで経っても10万の元金が残ったままだった。
彼はあまり暴力的な取り立ては出来なかったので上司には怒られていたけれど、おばあさんはお茶を出してくれたり、彼には親切にしてくれたそうだ。

...そしてある日、彼が取り立てに行ったときに、そのおばあさんは首を吊っていた...

彼はその日でその会社を辞めた...おばあさんの姿を忘れられなくて、しばらくは彼は何も出来ないでいた。
...やがて彼は、(経過は判らないが)自分が少し前に趣味で始めたゴルフでプロになろうと決心する...練習場で雑用のバイトをしながら、この日まで懸命にゴルフを続けてきたんだという。
「まだまだ上手くないのは判っている。自分に才能があるかどうかも判らない。でも、これに人生賭けるって決めたんです。」

彼はまだその時点では、70台が出れば上等なくらいの腕だった。
(この試合でも若い二人は70代前半で回っていたが、私と彼はいずれも80を越えてしまった。)

...あれからずいぶんの時が経ったけど、彼はプロになれたんだろうか。
まだゴルフツアーの世界で彼の名前を聞く事は無いけど、彼は自分の決めた道をひたすら歩き続けているんだろうか。


彼の、笑わない思い詰めたような顔が、後ろ姿が、今でも目に浮かぶのだけれど...

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