ゴルフな人々    (イラストレーター渡辺隆司のブログ)

ゴルフが人生に似てるのか、人生がゴルフに似てるのか... 忘れ得ぬ、ゴルフで出会った人々。

ゴルフ人生で、触れ合いすれ違った人達の、忘れられぬ想いを描き残しておきます。

img_0-101


机の上の二つの瓶の中には、全部で37500円ある。
さっき数えたばかりだから間違いない。

何のお金かといえば、去年の年の初めに約束した掛け金...というより、貯金の金額だ。

夫と私の趣味はゴルフ。
先に仕事の必要があって始めた夫に、「やってみると面白いから。」と言われてゴルフ教室に行くようになった。
それから8年経つけど、今ではスコアは同じくらい...100を切ったり、切らなかったり。
スイングはゴルフ教室で教わった私の方がきれいだと言われるけれど、夫は力だけはあるのでたまに凄くいいスコアも出す。

子供のいない共稼ぎなので、一昨年は夫婦でそれぞれ30ラウンドほどすることができた。
夫と一緒のラウンドも月1はできるようになった。
...が、同時に夫婦喧嘩も増えた。
一緒のラウンドでは、勝った負けたで結構マジ切れしたりする。

で、昨年の年の初めに「賭けをしよう」ということになった。
いろいろと検討した結果、「年間を通して穫ったパーの数で、勝負だ。」
つまり、平均スコアだと似たようなものだから、一つパーを穫るごとにそれぞれの瓶の中に500円を入れること...一年経って多い方が勝ち。

...一年経った。
結果は、二人で合計37500円の500円玉が貯まった。
...が、私の瓶には500円玉は5枚しかない。
後は35000円...70回パーを穫った夫の圧勝だった。
これは夫の作戦勝ちだった。
夫は飛ぶので曲がると大叩きはしょっちゅうなんだけど、フェアウェイに残れば白ティーからではパーもとれる。
それに比べて飛ばない私は、パーオンすることは稀で、パーパットはいつも長い距離が残る。
パーパットを「入れなきゃ」と思うとますます入らなくなった。
結局、ボギーやダボばかりになった。
平均スコアは似たようなものなのに、パーの数の勝負じゃあ完敗だった。

「お前、たったそれだけかよ」
...夫の偉そうに見下したような「どや顔」に腹が立つ。
「勝負にならないな」の声に、口惜しくて「ブチッ」と切れそうになった。
「なによ!その言い・・」
「じゃあ、この金を元にお前が欲しがっていたドライバーを買ってやろうか?」

「あ......」

img_0-99

「朝はやっぱり寒いなあ..」という季節、スタート前に熱いコーヒーでも飲もうかとクラブハウスのレストランに入った。
その男は、窓側の席でお銚子2本目を空ける所だった。
耳まで赤くして、気持ち良さそうに熱燗の酒を飲んでいる。
(おいおい、もう酔っぱらってるんじゃないか)
(そんなんでゴルフやって大丈夫かよ)
なんて心配になるくらい。

...その男と同じ組になってしまった。
「いやあ〜、冷えますね」
「こんな時は軽く一杯引っ掛けないと、とてもゴルフする気になりませんよねえ」
...(ん? 軽く一杯? お銚子2本で?)
...(おいおい...)

飛ばないながらも、それなりのゴルフで楽しそうにプレーして行く。
パーオンはしないが、巧みなアプローチで入ってパー、外れてボギーなんてゴルフを鼻歌まじりで続けて行く。
特にパーだから嬉しいとか、ダボだから口惜しいという事も無いようで、話題は天気の話や病気の話。
「私、痛風が出るとゴルフ出来なくなるんで、毎日薬飲んでるんですよ。」
「ああ、高血圧もあるし、コレステロールも高いし、腰も痛いし、膝も痛いし、太り過ぎだし、心臓も悪いし..あっはっは..」
(あっはっはじゃないと思うんだけど...)

陽気なゴルフも3ホールほどで、4ホール目に林で立ち小便をしたとたん、まるでガス欠になったように元気がなくなった。
5ホール目に売店が見えた時には、パットもそこそこに「お先に」と言って売店に行ってしまった。
我々が売店についた時には、嬉しそうな顔をして何やら飲んでいる。
「なに飲んでるんですか?」
「ああ、これ養命酒の辛口です。 旨いですよ。」
(って、なんで3本も手にしてるの...)

一本を飲んだあと、残りをカートに乗せて、彼のゴルフは9番ホールまで楽しそうに続いた。

昼休憩のレストランでも、彼は「熱燗2本ね」。
「大丈夫なんですか? 色々と悪い所があるってお聞きしましたけど..」
「ああ、大丈夫ですよ。 寒い時には熱い酒飲めば、ぜ〜んぜん大丈夫ですよ」
「すみませんねえ、こんな酔っぱらいで」

食事は蕎麦だけで、それを摘みに旨そうに酒を飲んでいる。
「おねえさん、もう一本頂戴!」
「え? もうかなり酔ってますよ...」
「あ、皆さんもどうですか? ちょこっと一杯」
「いえ、もうすぐスタート時間なんで結構です。」
「飲んでる時間、あまりないですよ。」

「ああ、もうスタート時間ですか...」
「いやあ、酒が旨いなあ..」
「じゃあ、私、午後はここで飲んでることにします。」
「ノーリターンと言う事でよろしく。」
「は?...」
(でも、その方がいいかも,,,)

「おねえさん、もう一本頂戴!」
「ホントに今日はいい天気だなあ。」




「ゴルフっていいよねえ...」


img_0-98

今月の第3土曜日に、またいつものメンバーとのゴルフの予定がある。
もう25年続いている年4回のゴルフだ。
25年前には、2組のコンペだった。

メンバーは当時スポーツジムで出会った、男7人、女はGさん一人だけの計8人。
そのスポーツジムに来ていた女性で、25年前にはゴルフをやる人はGさんしかいなかったのだ。

男性はリタイアした人が4人、自営業で時間が割と自由になる人が3人。
Gさんは、旦那さんが責任の重い立場にある公務員で経済的には恵まれている立場にあった。
それぞれが顔見知りになり、会話をするようになると、「室内のジムだけではなく、外でゴルフを一緒にやらないか」という事になり、25年前に二組のコンペがスタートした。
当時はGさんは35歳、自営業の3人は40歳前後、リタイアした人は60代が二人と50代が二人だった。
美人で華やかな雰囲気があったGさんは、男性7人に囲まれて非常に目立つ存在になった。
「まるで7人の従者を従えた女王様みたい」と噂されたりした。
実際には純粋にゴルフを楽しんだだけで、男女の関係は誰ともなにもなかったんだけど(だから長く続いていたと自分では思っている)、25年の間に4人の男性が世を去ったり病気療養で引退したりして、今では一組だけのゴルフとなってしまった。
最年長の男性は70歳を越えていて、他の二人は60代...自分も60歳になってしまった。
スポーツジムも潰れたり経営が変わったりで、今では同じジムにいるのは二人だけになってしまったが、Gさんは年4回のゴルフはずっとやめる予定はない。

また今月のゴルフでは、(年をとっていても)男性3人がナイトのように恭しく自分に付き従ってくれて、(年をとっても)自分は女王様のようにゆったりした気分でゴルフを楽しむ事だろう。
その一日だけはまるで魔法にかかったように、いつの間にか顔のシワも消え、動きもキビキビとしたキレを取り戻し、自分も従う3人の男性も25年前と変わらない姿に変わる事が出来るような気がする。
もちろん、他の人からそう見えている訳ではないのだが...

Gさんは彼らと一緒のゴルフのおかげで、年に4回、女王様になる事が出来るのだ。


↑このページのトップヘ