ゴルフな人々    (イラストレーター渡辺隆司のブログ)

ゴルフが人生に似てるのか、人生がゴルフに似てるのか... 忘れ得ぬ、ゴルフで出会った人々。

ゴルフ人生で、触れ合いすれ違った人達の、忘れられぬ想いを描き残しておきます。

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ゴルフをするとその人間の本質がわかる、と良く言われているのは知っている。
そうすると私って、獰猛な人間なのかしら。

...小さい時からずっと、他の人と喧嘩するなんて事はまずなかった。
たとえ喧嘩しても、いつも泣かされている方だったし、喧嘩しそうな雰囲気になるだけで逃げてしまったし。
それからずっと...少女時代も、20歳を過ぎてからでも、私は「目立たない」とか「おとなしい」という形容詞をつけられている、小心で穏やかな人間だったはずだ。
自分でも、争いごとを好まず、「みんなと仲良くしていければそれでいい」ってずっと思っているのは変わらない。

それがゴルフを始めたら、周りから言われる事が変わって来てしまった。
「君は獰猛なゴルフをするねえ」
「いやあ、本当に男前なゴルフだ」
「君の本当の性格は獰猛なのかもしれないねえ」
.....
そうなのかしら?
私は争いごとは相変わらず苦手だし、誰かを押しのけていい思いをしようなんて思わない。
「私は端っこでいいよ」なんて言うのが口癖だし、目立つところにいるのは嫌だ。

ただ、勧められて嫌々始めたゴルフは、まぐれ当たりでボールが遠くまで飛ぶのを見てからは、自分の数少ない楽しみのうちで最上位を占める趣味になった。
練習場のゴルフ教室で、レッスンプロに教わって一から覚えて、週一回の練習は欠かさない。

...ただ、私にとってその「ゴルフ」の最高の楽しみは「ボールを遠くへ飛ばす事」だから、(レッスンプロにちゃんと教わったのに)遠くへ飛ばしたくてフライングエルボーのオーバースイングになっちゃったし、「コース攻略の方法」なんていうのも勉強したんだけれど、ピンが見えたらピンに真っすぐ打たないと気が済まない。
せっかく広くて気持ちのよいコースに来たんだから、天に向かって「どこまでも飛んで行け!」とドライバーを打ち、ピンに向かって「ともかく最短距離を」とアイアンを打つ...それしか考えたくない、というのはおかしいだろうか。
(その間に池があっても谷があっても、OBがあっても1ペナがあっても、それを越える事が気持ち良いんだし...)

私の「人見知りをする」、「臆病」で「引っ込み思案」で「目立たない事が好き」で「争いごとは好まないし怖い」という性格は、ちっとも変わっていないんだから、ゴルフを見て私の事を「獰猛だ」なんていうのは間違っていると思うんだけど...

だから、「ゴルフのプレーを見れば、本当の性格がわかる」、なんていうのは間違っている、と私は思っている。
...私は獰猛じゃない。

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「本当に親父か?」
Kさんが、自分の父親のその写真を初めて見つけた時には、ルーペで何度も拡大してみたほどだった。
...父親が、照れくさそうに、でも嬉しそうにカップを抱いている写真。

...そんなはずは...
だって親父は最後まで100を切るか切らないかの腕だったし、ハンデだって15まで行ったかどうか..
自分とやっても何時も10打以上多く叩いていた。

酒もタバコもやらずに、趣味と言えば毎週一回行く練習場と月一回のゴルフだけだったけど、真面目に続けていたのは知っている。
どういう訳でゴルフを始めたのかは知らないが、長くやっている割には極端なオーバースイングとアウトサイドインのスライス打ちは、とうとう治らなかったなあ...
自分がゴルフを始めた時には色々と教えてくれたけど、スコアが親父より良くなってからは何も言わなくなったっけ。
「ボールに触るな」と「プレーを早く」だけは何時も言い続けていたけど。

だから親父のゴルフの自慢話なんて、殆ど聞いたことがない...まして「優勝した」とかなんて話は一度も聞いたことがない...それなのに、出て来たカップを持った親父のモノクロ写真。
気になって、親父のものを捨てられずに仕舞ってある物置を探してみると...一番奥の荷物の下から、ボール箱に入った古いカップが出て来た。
カップは結構大きく、台座には「XXテレビ」と地方テレビ局の名前が掘ってあって、あとはなにも書いてない。

その後テレビ局の広報に聞いてみても、よくわからなかったこのカップの由来が、この前やっと明らかになった。
知っていたのは、親父の古いゴルフ仲間のHさん。
自分があちこちでこの写真の事を聞いて回っている、と言う事を聞きつけて連絡をくれた。

「そのカップは優勝カップじゃないんだよ」
「それ、テレビでやっていた大会のニアピンのカップなんだ」

かなり以前の事、その地方テレビ局の番組で視聴者が一組4人単位で出場して、チームの成績を競う大会を開催した事があったという。
その大会に親父の仲間が応募して、人数あわせに親父も無理矢理出されたんだとか。
チームのホールごとのベストスコアを出せばいいので、下手でも4人目でいれば問題なかったという。

その時にアトラクションとして、全てのパー3ホールにニアピンがあった...これは勿論個人のショットごとの記録だが...そのあるショートホールで、親父の万に一つのスーパーショットが飛び出した...オーバースイングの大き過ぎたアイアンが、テンプラ気味に当たり、あわやホールインワンの30センチに付いたという。
(ホールインワンだったら車一台だったらしい)

この日の親父のナイスショットはこれ一発だけ...でも、チームとしても賞品を貰えたのはこのニアピンだけだったので、しばらくは親父達の仲間内で話題になったという...このとき成績が良かったチームはテレビに映ったらしいが、親父達にはカメラもつかず、テレビに映る事はなかったとか。
ただ、こういうアトラクションで賞を獲った人は、一人一人テレビ局のカメラマンに記念写真を撮ってもらってプレゼントされたんだとか。

謎が解けたこの写真...ひょっとしたら、これが親父のゴルフ人生で一番脚光を浴びたシーンだったのかも。
なんか、親父の表情といい、カップをぎこちなく持つ手といい...微笑ましくて、額にでも入れて飾っておきたい。

いいよなあ、親父のこんな顔は息子の俺もあまり見た事ないような気がするし。
他の人には、ニアピンのだ、なんて言わないでおくからさ。

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問題は山ほどあった。
迷っていた。

Hさんは、所謂「アラフォー」ならぬ「アラフィフティー」の女性...もう50に近いのか、なったのか。
先日、初めてオープンコンペに一人で参加した。
...それは、彼女にとって大変な決心だった。

山ほどある問題は、例えば...お金がない、車が無い、ラウンドは一年振り、練習にも月一度行ってるかどうか、人見知りするのに一人で参加、オープンコンペなんて出た事が無い...等々。
以前、といっても3年くらい前までは練習は週に一回、ラウンドは月に2度くらい行っていた。
ゴルフは初めて10年くらい、趣味と言うか、遊びの中では一番気に入っていた。

しかし、最近身の回りの「山ほどあるゴルフを続けるのが困難な問題」に対して、自分はどう対処すればいいのか。

そこで、自分が本当にゴルフをどのくらい好きなのか、ゴルフをどう思っているのか、オープンコンペというものに出て試してみようと思いついた。
勿論、いいスコアが出るなんてあり得ないし、賞品なんてとんでもない...でも、ここで嫌な思いをしたり、ゴルフを嫌いになるような出来事が起これば、それでキッパリとゴルフをやめられる...本心はそんな所。
探したのはHさんの住んでる私鉄の沿線で、電車賃とプレーフィーなど全部入れても1万円以下で、知り合いのいない初めて行くコース。
...気持ちは、なんだか無謀な大冒険に出る気分。

一緒になったのは、それぞれ一人で来ている五十代から六十代の男性3人。
「ご迷惑をおかけします。」と一応挨拶して言っておいたけど...

3人のうち六十代の一人は上手かった。
あとの五十代の二人は、一応アベレージゴルファーという所だろうか。
自分は一人レディースティーからだけど、緊張と練習不足からチョロや当たり損ねを繰り返し、自己嫌悪と申し訳ない気持ちで落ち込むばかり...ところが、「もうゴルフはやめよう」という気にならない。
...3人の男性が、チョロをそれぞれに励まして慰めてくれる、当たり損ねのボールを一生懸命探してくれる、バンカーで出なくても辛抱強く応援してくれる、パットのラインを自分のラインそっちのけで見てくれる...
六十代の男性は、ゴルフのこぼれ話をおもしろおかしく話してくれる。
自分のプライベートな事には立ち入らずに、なんとか落ち込む自分を楽しくさせようと気を使ってくれるのが感じられる。
五十代の男性達も、自分のミスを大笑いで笑い飛ばし、「ゴルフはスコアよりも楽しいのが一番です」なんて声をかけてくれる。

...スコアは、三桁を軽く越える散々なものだったけれど、「もうゴルフはこれでやめよう」なんて気持ちにはならなかった。
半分自爆するようなつもりで飛び込んだオープンコンペは、思わずほろりとするような暖かさで自分を迎えてくれた。
勿論、いい人達と一緒になった「運」もあったろうけれど、かえってゴルフの素晴らしさ...自分はやっぱりゴルフが好きなんだ、という事を自覚させてくれるものだった。

...おまけにパーティーでは、なんと「飛び賞」の55位で「ケーキ」のお土産まで貰ってしまったし...他の3人は微妙に入賞から外れてしまったのに。

帰りの電車の中では、バッグとケーキを膝に乗せて曝睡してしまった。
多分、アラフィフティーのオバサンのみっともない姿だっただろうなあ、と思う。


...でも、ゴルフのいい夢見ていたんだから...いいんだ。

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