img_0-26

その老紳士には、オープンコンペで2度会った。

茨城県のLというゴルフ倶楽部と、Oというゴルフ倶楽部のコンペ。
多分70近い年齢ながらかなりゴルフをやっているという感じで、あまり飛距離は出ないけど上級者用のクラブを使っていた。
特にドライバーは2度とも最新の評判の高いもので、実物見るのは始めてという同伴競技者もいて、クラブ談義に花が咲く。

痩せていて、スイングもクセのないものだったけど、球筋はストレートからややフェード、飛距離は200ヤード前後というところ。
スコアもパーやボギー、悪くてもダボはハーフに一つくらいでスコアは良かった。
不思議なのは初めて一緒にプレーしたときもそうだったけど、ドライバーは殆どフェアウェイをキープして、前半を40そこそこで上がってくるのに、後半になると急にドライバーが暴れ出すこと。
特にド引っ掛けやチーピン、プッシュアウトが多くなる。

本人は首をひねりながら、前半に比べれば力が入りすぎているように見えるスイングを続ける。
そのうちに、あれほど正確に当たっていたドライバーでダフったりトップしたりしてくる...当然スコアは前半よりずっと悪くなるけど、本人はそんなこと気にしていないようだ。

それが2度ともなるとさすがに不思議で、ラウンド後のパーティーの時に聞いてみる。
「いやあ、打てないんですよ」
「50代の時に大きな病気をする前は、凄く気持ちの良いドローボールが打ててたんです。」
「それが60過ぎて再開したら、全然前のようなドローボールが打てなくなっちゃいまして」
「どうやっても、ストレートからややフェードのボールしか打てないんです」
「それでスコアがまとまっても、昔のようなボールが打てないとちっとも楽しくないんですよ...」

それで、そんなに多くない稼ぎを遣り繰りして、「これを使えばドローが出る!」とか「このドライバーならドローが打てる!」なんていうドライバーを片っ端から使ってみているんだと言う。

「...でも、何を使っても以前のようなドローボールは打てないんですよ..」
「もちろん、スイングの問題かと思って、前傾を変えないようにとか、インから入れるとか、クローズドに構えるとか、色々やってみたんですが...酷いチーピンのボールとか、引っかけのフックは出るんですが、前のようなイメージのドローボールは1球も打てません」
この日の午後のハーフも、思いつく限りを試してみたけど、結局ダメたったんだそうだ。

今でもラウンド前やラウンド後に、「緑の中を一度右に出て行ってから、グッと勢いを増してフェアウェイの真ん中に帰ってくる白いボール」の夢をよく見るんだとか。

「あのボールが打てないと、私じゃないんです。」
「どうしても、もう一度あのボールを打ちたいんですよ。」


「どこへ行っちゃったんでしょうねえ...私のドローボール...」