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Tさんは、ゴルフが好きだ。
30年くらい前にゴルフに出会ってから、その飛んで行くボールの浮遊感に感動してから、ずっと熱は冷めていない。
身体はそんなに大きくないが、若い頃運動をやっていた関係で、自分より大きな男に飛距離で勝つのが無上の快感となってしまったからだ。

だからゴルフの「飛ばし」に関する情報には、いつも注目している。
ゴルフ雑誌を毎週買って、新しい「飛ぶドライバー」の情報を見逃さないように気をつけている。

思えば最初はスチールシャフトのパーシモンのドライバーだった。
それが、友人の薦めで200年物のパーシモンを使っているという、「高級」なドライバーに替えたら、飛距離が伸びた。
これに味を占めて、少し経ってから貯めた金でクラシックの名器「トミーアーマー945」を買った。
凄く高かったけれど、やっぱりクラシックの名器、弾道も飛距離も期待通りだった。
...そのうちに、メタルヘッドのドライバーが発売されて、「飛ぶ」というのでプロが使い始めた。
半信半疑で手に入れてみて、使ってみたら...本当にパーシモンより飛んだ!
そこでパーシモンからメタルヘッドに替えて飛ばしているうちに、値段は高いがチタンヘッドの方が飛ぶと言う噂が聞こえてきた。
...そこで、巷で評判になっていた230チタンを手に入れて使ってみると...これは飛ぶ!
これこそ最高、と思っていたら、今度はヘッド体積300ccのミズノ300Sと言うのがプロが使って飛ぶ、と評判になった。
...それで300Sを手に入れてみると、本当に飛ぶ!
「これこそ最高!」と気に入って使っていると、間もなく「高反発フェース」とかが評判になり、フェースも大きくなってきた。
... 半信半疑でそれを使ってみると、やっぱり飛ぶ!
...ところが、間もなく高反発フェースとやらがルール違反だというので、使えなくなった。
でも、今度は「高反発より飛ぶ」と言われるドライバーの広告が沢山出て来たので、試しにそっちにしてみると...やっぱり飛ぶ!
...そうしたら、週刊誌なんかのギア情報では「リシャフト」するともっと飛ぶ、というのでやってみた。
...シャフトだけでも結構高かったけれど、確かに元のシャフトの時よりも飛ぶようになった。

...でも最新の情報では、自分のスイングを診断してもらって、自分にあったクラブを組み上げるともっと飛ぶ、と言うので早速ショップに行って測ってもらって、作ってもらった。

...やはり作って良かった。
飛ぶし、曲がらない!

しかし、Tさんは最近一杯飲みながら月を見上げて思うことがある。
クラブを替えるたびに、確かに前より飛ぶようになった...それは実感しているし事実だ。
でも、何時も前に使っていたクラブより飛ぶようになったんだから、単純に前のクラブより飛ぶようになった分を足していけば、今頃は400ヤードぐらい飛んでるはずなんだよな。
...それなのに、パーシモンの頃に回っていたときと、そんなに第2打地点は変わらないんだよな。
不思議だなあ...どうしちゃったんだろう、飛ぶようになった分は。


俺、ゴルフ場にいる狐か狸に化かされているんだろか。それとも、ゴルフの女神さんに からかわれているのかなあ。


あ、そういえばさっき見た本に「最新科学の飛ぶドライバー」とかが...