img_0-44
プロになっても試合に出られない者や、プロを目指す者、腕試しをしたい者などが参加するミニツアーは、日本でもあちこちで開催されている。
基本はプロないしはプロ宣言した者は5万円前後の参加料を払って、アマの参加者は1−2万円を払って払って参加して、集まった金が賞金となりそれを「プロ参加者」が取り合うという仕組みだ。
大体優勝すれば100万円くらいが手に入る。
賞金を貰えるのは3位くらいまでで、本当に生活と夢を賭けた一日勝負だ。

かなり前にある新聞社の企画で、何回かこんな試合に体験参加したときの話。

ある試合で一緒になったのは、若い二人(二十代のプロもしくは研修生)と、30代の男性一人。
若い二人は、もしアマだったらスクラッチからプラスハンデになるくらいの腕前...しかし、プロとしてはレギュラーツアーに出場出来ないレベルというところ。
もう一人の30代の男性は、真剣さと気迫は十分に感じるのだけど腕は自分と同じくらいで、プロレベルとはまだとても言えない。
しかし、一打一打に対する真剣さは、常識外れとも言える程の迫力を感じた。

ミニツアーの試合は自分が出した金を取るか取られるかの緊張感があるために、やたらとプレーが遅い..,この日の試合は前半で3時間を軽く超えていた。
そのために待ち時間に色々と話す機会があり、彼の話を聞くことが出来た。

...それは、まるで安っぽい虚構の小説のような話だった。
彼は大学を出てから就職がなかなか上手くいかずに、結局就職できたのはある有名な消費者金融会社だったという...いわゆるサラ金だ。
とても好きな仕事ではなかったけれど、給料は良かったので真面目に働いていたという。
やがて仕事に慣れて来ると責任を持たされる仕事をやらされることになり、支払いの遅れている人の取り立てがメインとなった。
その受け持ち地区の中に、支払いが遅れがちな、彼の祖母くらいのおばあさんがいた。
でも、その支払いもいまのサラ金法ができる前の話で、たった10万借りたのに、もう20万以上返していたんだとか...しかし、一度に元金全部を支払えないので利息だけを支払っている結果となり、いつまで経っても10万の元金が残ったままだった。
彼はあまり暴力的な取り立ては出来なかったので上司には怒られていたけれど、おばあさんはお茶を出してくれたり、彼には親切にしてくれたそうだ。

...そしてある日、彼が取り立てに行ったときに、そのおばあさんは首を吊っていた...

彼はその日でその会社を辞めた...おばあさんの姿を忘れられなくて、しばらくは彼は何も出来ないでいた。
...やがて彼は、(経過は判らないが)自分が少し前に趣味で始めたゴルフでプロになろうと決心する...練習場で雑用のバイトをしながら、この日まで懸命にゴルフを続けてきたんだという。
「まだまだ上手くないのは判っている。自分に才能があるかどうかも判らない。でも、これに人生賭けるって決めたんです。」

彼はまだその時点では、70台が出れば上等なくらいの腕だった。
(この試合でも若い二人は70代前半で回っていたが、私と彼はいずれも80を越えてしまった。)

...あれからずいぶんの時が経ったけど、彼はプロになれたんだろうか。
まだゴルフツアーの世界で彼の名前を聞く事は無いけど、彼は自分の決めた道をひたすら歩き続けているんだろうか。


彼の、笑わない思い詰めたような顔が、後ろ姿が、今でも目に浮かぶのだけれど...