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女子プロゴルフが話題になる時に、ちょっと私の胸の奥でちりちりとするものがある。

今の私は、ゴルフは全然やっていない...というよりゴルフをプレーしにコースに行ったことも無い、というのが本当かもしれない。
やったことはあるのだ、遠い昔...中学一年の頃に。

以前父はゴルフに熱中していて、メンバーが多いために安かったコースの会員権を買って競技を盛んにやっていた。
もちろん普通のサラリーマンだったので、プレーは月2回が限度だったけれど、毎日素振りを欠かさずにハンデは5までいった。
そんな父のコースで夏休みに「ジュニア教室」を開くというので、中学に入ったばかりの私も参加することになった。
本当はゴルフなんかに興味は無かったんだけれど、「やりたい」と言うと父が喜ぶので、嫌々ながら参加しただけだった。
...でも、実際にやってみると私は適性があったらしい。
基本的なグリップや体の動きを教えてもらった後、ボールを打つことになっても一度も空振りをしなかったし、ボールはあまり曲がらずによく飛んだ。
元々運動神経には自信があったし、体の柔らかさやバネの強さにも自信があった。
一週間の合宿が終わる頃には、ドライバーで200ヤードぐらいまっすぐに飛ぶようになっていたし、アイアンもちゃんと当たった。
そのコースのプロで先生役だった人が、何度も「君、本当にゴルフやったこと無いの?」って聞きにきた。
最後の日に、メンバーである保護者と組んで3ホールを回ったけれど、私と父の組だけがパープレーだった...それも父のミスを私がカバーしたりして。

プロが私に「君はプロになる気はない?」と聞いたんだけれど、私は「わかんない...」としか答えられなかった。
その後、プロは父と結構長い時間話していた。

その日の夜、父が私に真面目な顔で「話があるんだけれど...」って言ってきた。
「プロが、お前にやる気があればプロになれると思うから、本格的にゴルフをやる気は無いか、って言うんだ。」
「お父さんは、お前がもし本気でゴルフをやる気があるんだったら、応援するから」
...


「私、ゴルフはやらない」
「本当にそれでいいの? お前には特別に才能がある、ってプロが言っているんだぞ?」
「私、やらない。」

その後、ゴルフクラブを握ったのは一度だけ。
大学に入った時に、クラブの勧誘をいろいろやっているところに「ゴルフ同好会」があった。
一緒に大学に入学した友達が興味があるって言うのでつき合ったら、「あなたもちょっと打ってみてください」って言うので久しぶりにクラブを握った。
...ちゃんと当たった。
何発か打つといい当たりが連続した。
「あなたはゴルフやってたんですか?」と聞くから「中学の時に一週間くらい」というと「是非、うちの部に入ってくれないか」って離してくれなくなった。
「入る気はありません。」ってはっきり言って入部しなかったんだけれど、その後半年くらいずっと勧誘を受け続けた。

...父は私が26の時に、癌で亡くなった。
その入院している時に、父がその時のことをしみじみと話してくれた。
「もし、お前がゴルフをやる、と言ったら、お父さんはゴルフをやめて会員権や自動車を処分してでも、お前がゴルフをやる金を作ろうと思ってたんだよ。」
「でも、お前がゴルフをやらない、と言ったからお父さんはゴルフを続けられたんだ。」
「...正直、お前がゴルフをやらない、と言った時、少しホッとしたりしたんだ。」
「でも、もっとちゃんと勧めてたら、お前は今頃はゴルフの才能を発揮していたかもしれなかったのに、悪かったなあ..」

...そんなことわかってたんだよ、お父さん。
私、お父さんの楽しみにしているゴルフをやめさせてまで、ゴルフをする気はなかったんだ。


私も、もう30才を超えてしまったけれど、あれからゴルフをしてはいない。
これからもする時が来るのかどうかわからない。

ただ、今でも「もしあの時...」と思うと、ほんの少しだけ胸の奥がちりちりとすることがある。