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口惜しかった。
自分の中の深いところから口惜しさがこみ上げて来て、どうにもならなかった。
...自分にそんな感情が強くあるなんて、生まれて初めて知った。

去年、付き合っていた彼から誘われて、一緒にパブリック選手権の予選に申し込んだ。
4年ほど前に、彼に無理矢理連れて行かれた練習場でゴルフを始めてから、初めて体験する「ちゃんとした試合」だった。

...3年前から週一回練習場のプロの教室に入って練習を続け、その頃は月3回くらいラウンドするようになっていた。
練習場仲間のコンペでは上手い方になり、平均して90は切るようになっていた。
彼とのツーサムのラウンドでは、レディースティーからだったけど彼といい勝負をするようになっていて、ベストスコアは81を出していた。
運動は好きだけどあまり熱くなれない性格は、「競技」というものには向いてないと思っていたので、ゴルフも楽しければいいとしか思っていなかった。

そんな時に彼が「パブ戦に出ようかと思ってるんだけど、君もどう?」と言って来た。
「そういうものに興味がないから」と断ったのに、強引に一緒に申し込みをされてしまった。

試合の前の日も別に「どうせ予選落ちなんだから、気楽にやればいい」くらいにしか思っていなかった。
そして当日。
スタート前に名前を呼ばれ、マーカーが決められた時に「あれ?」と思った。
足が震えている。
それからスタートして3ホールくらいのことを殆ど覚えていない。
スコアカードには3ホールで10オーバーのスコアが書かれている。

一緒に回った3人は、二人が年上のベテランゴルファー、一人は高校生くらいの若い娘。
試合慣れしているのか、淡々と回って行く...いつものコンペのように「キャー!」とか「わあー!」なんて嬌声を上げることはない。
やっと最後の二ホールくらいになって、自分らしいゴルフが出来たように思う。
スコアは100をオーバー...一緒に回った一番年上の女性が、優しい声で「ちょっと早かったわね」と声をかけてくれた。
...そのとき、信じられないくらいに熱く「口惜しい!」という思いがこみ上げて来たのだ。
「口惜しい」という言葉が頭の中にぐるぐると回って消えて行かない。



それから、ゴルフに真剣になった。
「もっと上手くなる事」
「もっと強くなる事」
それしか頭に無くなった。
彼があきれて去って行った。
給料のほとんどをゴルフに回した。

でも、腕はもどかしいくらいに上がらない。

そしてまた春。
2度目のパブ戦挑戦....この一年でかえって自信が無くなったような気さえするけど、去年よりは少しでもいいスコアを出してやるつもり。
自分がこんなに一つの事に拘り続けるなんて、生まれて初めての経験だ。

でも、自分にこんな一面があったんだ、ということを密かに楽しんでいる自分がいる。
こんな「熱いもの」を感じて、初めて生きている気がしている自分がいる。