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オープンコンペで出会うゴルファー達は、ほとんどが少ない収入と時間をやりくりして好きなゴルフを続けようとする「愛すべきゴルファー達」なんだけど...
時には場違いな人に出会う事もあるから、オープンコンペは面白い。

これはオープンコンペに参加するようになった初期の頃に出会った、「あるゴルファー」のお話。

朝、自分のバッグが積まれたカートの前に行って、同じカートにバッグを積まれた人と最初に挨拶するのは、その日のゴルフが面白くなるかどうかが決まる緊張の一瞬。
普通はお互いに帽子をとって挨拶し、「よろしく」となり、「最近はあまりゴルフをやってないもので」とか「久しぶりのゴルフなので」と言い訳を言い、「このコースは初めてなので」とか会話が続く。

その男は30代そこそこか...まるで映画の登場人物のように、背が高くハンサムで、歯並びの良い真っ白な歯を見せて笑う好青年だった。
使っているクラブも最新のクラブで、ウェアもなんだかメーカー品のものだとわかる高そうなもの。

他の二人は私と近い年齢のおじさん達だったが、この明るい若者はすぐに馴染んで会話も弾む楽しいラウンドとなった。
話題も豊富で、ゴルフの歴史などにも詳しく、ニクラスやパーマーの時代のゴルフの話も出てくる。
「いえ、私が見てたんじゃなくて、親父や祖父がゴルフをやっていたもので、聞かされていたんですよ」

昼食中などの会話でわかって来たのは、彼は代々続く医者の家系で、今は大きな病院勤務だけどやがては親の個人病院の後を継ぐ事になる...医師だという事。
ゴルフは子供の頃から親と一緒にやっていたんだけれど、自分にはあまり才能が無い...でもプレーするのは好きなので、夜勤明けなんかで急にやりたくなるとこうしてオープンコンペに飛び入りするんだと。

ゴルフの腕は、それほど執着しないゴルフのプレー振りからして、ハンデは10前後か。
いいショットを打つけれど、なぜか運悪くへんなライに行く事が多く、「あちゃー、またこんなところだ」なんて頭を掻きながら笑う。

小さい頃から「当然」医者になるのが当たり前という環境で育ち、別に「それほど」特別な苦労も無くストレートで医大に入り、病院勤務の間に「こんなところで」と結婚して、将来は「予定通り」親の後を継ぐつもり...彼が言うには「普通に」そうして生きて来たのだという。
「つまんない人生ですよ」
趣味はゴルフと車(しか)ないんだそうで..おじさん達は、何も言えずに苦笑いするだけ。

明るいプレーを続ける彼に対して、ラウンドが進むに連れて他の3人は言葉も少なくなり、淡々とプレーしていくようになった。
...何度目かの、酷くアンラッキーなライにボールが止まった時に、彼が言った。
「こんなアンラッキーがあるから、ゴルフは面白いんですよねえ」

おじさん3人は顔を合わせて、思わず同じ事を呟いた。
「彼にはゴルフしかアンラッキーな事は無かったんだろうねえ...」