ゴルフな人々    (イラストレーター渡辺隆司のブログ)

ゴルフが人生に似てるのか、人生がゴルフに似てるのか... 忘れ得ぬ、ゴルフで出会った人々。

2016年11月

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その男にあったのは、茨城県のHカントリークラブのオープンコンペ。
一人ずつの参加した4人が組み合わされて、一緒の組になったうちの一人。
最初に顔を合わせたときに、帽子をとり名前を言って挨拶したんだけど、じろっと見てちょっと頭を下げただけで名前をはっきり言わなかった。
(変な奴だな..)

年は60歳前後、俺の数倍真っ黒に日焼けしていて、服装から態度からいかにも「オレはゴルフが上手いんだぞ」と言う雰囲気をまき散らしている。
練習グリーンでパットの練習をしていると、知り合いらしい数人がやって来て、その男に色々と教えてもらっていた。

他の同伴競技者は、埼玉から来た40代の陽気な男性Kさんと、横浜から来た大人しそうな40代の男性Oさん。
こちら二人は明るくて、すぐに話が弾んで盛り上がる。
...が、どうも先程の男は我々を見下しているようで、中に入らない。

スタートすると、その男はやはりそれなりの腕とコースを熟知している様が見て取れる。
埼玉のKさんも上手そうだし、俺もなんだか調子が良い。
スタートホールで、俺とKさんがパー、その男は短いパーパットが蹴られてボギー。
あれ?こんなはずじゃ...とその男は首をかしげて不愉快そうな顔をしている。

Kさんはたまにボギーを打ちながらも、堅実にプレーしているし、俺は相変わらずのお祭りゴルフで、隣のホールに打ち込んでそこからバーディーを獲ったり、バーディーチャンスで3パットボギーを打ったり...でも、結果としてスコアが上手くまとまっている。

気が付くと、アウトの最終ホールまで、Kさんと俺が交代でオナーを努めて、その男は一度もオナーを獲れていなかった。
そして、そのハーフ、俺が2バーディー2ボギーの36(出来過ぎ)、Kさんが38,その男が40...

その男のイライラ感は、傍目にもはっきりとわかるようになり、昼食時には一言も我々とは話さずに、さっさと食べ終わって出て行ってしまった。

その後の残された3人の会話
「あの人はきっとこの地元では凄く上手いんだろうねえ」
「うん、よっぽど腕に自信があるんでしょう」
「他の人に色々と教えていたからね」
「それを大叩き男さんと、私のように軽いのが平気で良いスコア出しちゃうから頭に来てるんでしょうねえ」

午後になるとその男は益々荒れてきた...ミスしてクラブをたたきつける、地面を蹴っ飛ばす...
俺は後半はそんなに良い調子が続くはずもなく、パーとボギーの繰り返しになったけど、かわりにKさんが絶好調で、相変わらずその男はオナーをとれない...

そして終わり近くのあるホールのグリーンで...
その男が2メートルほどのバーディーパット。
丁度スタンスの部分に、Oさんのマーカーがあった。
かなりいらついていた男に、Oさんが「邪魔になるでしたら動かしましょうか? 踏んでもかまいませんよ」と言ったら...
「じゃ、踏みます!」
ためらいも見せずにその男はOさんのマーカーを踏みつけた。
...それも勢いをつけてドン、ドンと2回踏み、グリグリとねじってスタンスをとった!

思わず俺とKさんは顔を見合わす...Oさんも驚いたような顔で我々の方を見た。

...その男のバーディーパットは、カップをかすりもしなかった。



その男はパーティーの時も、組ごとに席は決まっていたのに同じテーブルにはやってこなかった。

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A子さんは、ゴルフの前日にまともに眠ったことがない。
と、言うより殆ど眠れない。

ゴルフを始めたのは5年ほど前、子育ても一段落して友人や旦那に勧められて、近所のゴルフ練習場のゴルフスクールに入ったのがきっかけ。
そこで仲間が出来て、そこのゴルフサークルに入り、サークルのコンペにも出るようになった。
それ以来、週一度の練習場の教室には必ず参加し、3ヶ月に一度のコンペに出て、その他に月に一回仲間とのゴルフに行く。

...だけど、初めてコースに行って以来、前日にぐっすり寝たということは一度もない。
まるで遠足の前の日の子供のように、緊張して眠れなくなってしまう。
前のラウンドで上手く行かなかった事が、頭の中をぐるぐる回る。
練習場で覚えた事が、ボールを前にしたらすっかり頭から消えてしまう様な気がして、心配でしょうがない。
そんな事が次から次へと頭に浮かぶ。
月に一度のラウンドは、ずっと前から楽しみにしていたはずなのに....

「眠ろう」「寝なくちゃ」...と思うたびに頭は益々冴えてくる。
旦那に言われて、飲めない酒を飲んだ事もあった...かえって、心臓がドキドキしてきてダメだった。
おまけに次の日の午前中気持ち悪かった。
昼間に、色々と忙しく動き回り、プールに行ったりして身体を疲れさせてみた。
余計に疲れが残っただけだった。

寝ようとして目をつぶると、今まで回って印象の深かったコースの風景が浮かんでくる。
ティーグラウンドの興奮が蘇ってくる。
パットを外した時の、失望を思い出す。
池にボールを入れたときの脱力感が、OBを打ったときの後悔が、競い合っている仲間にスコアで負けたときの悔しさが、いくつもいくつも頭の中に湧き上がって来て...気が付くと外が明るくなっている。
ゴルフの日にはその繰り返しが続いている。

だから、いつもラウンドの日は目が充血している。
日焼け止めをいっぱい塗るからいいんだけれど、化粧ののりも良くないし、朝に食欲も湧いてこない。
お腹の調子も良くないし、午前中は身体が重い。
...そのかわり家に帰ってきたら、ばたんと倒れて朝まで爆睡する。
次の日は体中が筋肉痛で痛い。

だけど、ゴルフが大好きなのだ。
平凡な自分の「多分」幸せだけども変化の乏しい日々の暮らしの中で、ゴルフは大きなアクセントになっていて、ひと月の出来事はゴルフの日を中心に動いている様な気さえしている。
...そんなに良い暮らしが出来なくても、贅沢を我慢しても、ずっと同じ古いクラブを使っていても、仲間のように最新のゴルフファッションとは縁のないウェアしかなくても、不満はない。
日常生活とは違う世界をラウンドする事は本当に楽しいのだ。
 
...だから、月に一度の「眠れない夜」は、自分には絶対必要だと思っている。

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茨城県の、Sゴルフ倶楽部のオープンコンペで一緒になったOさん。

このコースのメンバーだそうで、長身の穏やかで上品そうな白髪の紳士だった。

「このコースにはしょっちゅう来ていますので」と、実に良くコースを知っていていろいろと教えてくれる。

年齢は「もう80ですよ」と言うが、以前はシングルハンデだったとかで、アドレスもフィニッシュもいつも同じように決まっている「いかにも」のベテランゴルファー。

もう二人一緒になった方は40代と50代の男性二人で、共にこのコースのメンバーで月例前の練習に来たのだとか。


こういうオープンコンペでは珍しく、皆いい球筋のボールでよく飛ばす「レベルが高い」ゴルフになった。

何より驚くのが80近いと言うOさんが、よく飛ぶ事。

無理の無い美しいスイングで、若い二人のメンバーと同じくらい...時々は彼等をアウトドライブするくらい。


...ただ、この日の俺は調子が良くて、ドライバーの捉まりも良く、このOさんより50ヤード以上先に行く。


Oさんは昔は月例に出ていたと言うが、今は競技には出ずに健康本意のゴルフだと言っていた。

そのOさん、はじめは「ナイスショット!」「飛ばしますね。」なんて言ってくれていた。が、そのうちに常に50ヤード以上先に行く俺のティーショットを見て笑顔が消えて行った。

常に同じように収まっていたフィニッシュが、少しずつ乱れて来る。

打ち終わった後スッと立っていられず、何歩かよろめくようになる。

トップがオーバースイングになってきて、インパクトで力が入って来る。

飄々として穏やかだった顔つきが、インパクトで鬼の形相になって来る。

仕舞いにはインパクトで声迄出て来る。

右足に体重が残り明治の大砲スタイルになってくる。

フォローで右手が離れ、身体ごと回ってしまう。

ついには身体ごと回って右足が宙に浮き、フィニッシュでは左手一本で頭の上まで振り回してくる。


しかし、ボールは段々右に行ったり左にいったり、天プラしたり...


綺麗に梳かしていた白髪が、乱れてザンバラになり、額に汗が浮かぶ...


「く..飛ばない!」

「ああ、飛ばなくなったなあ..。」


30台40台の二人も、口あんぐりでOさんを見ている。


いや、「飛ばない」って...

80歳近くでそこまで振る人、見たこと無いんですが...

いや、だって普通の80歳って...

世間ではぼけてきたり、寝たきりになったり、徘徊するようになる人も多いって...



Oさん、後半はスコアなんか無視して、全力のフルスイングを通してしまった。

スタート前の紳士の雰囲気はすっかり消えて、髪はザンバラ、シャツはズボンからはみ出し、額からは大粒の汗を流し、スイングはもう....



そして、最後に

「くそーーーー!」。




ああ、本当に

いくつになっても「男」ってやつは...



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綺麗な女性だった。
T県のSゴルフクラブで行われたオープンコンペ。
それぞれ一人参加のゴルファー4人の中の、30代半ば過ぎかと思われる女性の一人参加だった。

真っ黒に日に焼けて筋肉質の身体で、思い切りよくクラブを振り切り、パットは必ずカップをオーバーする。
眩しい程に魅力的に笑う彼女は「私、10年ごとに違うスポーツに熱中するんです」と言う。
その前はサーフィンに夢中だったと言い、2年前からゴルフに夢中だと明るく語る。
贅肉のない身体は良いとして、その日焼け具合はおせっかいながら「お肌の手入れは大丈夫?」なんて心配になるくらい。
ラウンド中は他のことは一切目に入らないくらいゴルフに集中していて、一打一打に本気で一喜一憂する様は、ずっと年上の俺から見ると実に微笑ましい。
この日は調子が良かったらしく、難しいアプローチを上手く寄せたり、長いパットを沈めたりして気分がどんどん乗っていくのがよくわかる。
ティーショットも尻上がりに良くなり、飛距離も出てきてる。
私以外の男二人はスコアでも飛距離でも負けている(もちろんレディースティーからだけど)。
アウトを無難にこなし、インに入っても尻上がりに調子が良くなって行く彼女のゴルフは、このコースで難しいと言われている、上がり数ホールで連続パーを続ける。
最終ホール、グリーンをオーバーした下りのアプローチを1メートルほどに寄せた。
笑う余裕も無くなった緊張した顔で、上りのパーパットをしっかり打ち切った瞬間。
「やったああ! ベストスコア大幅更新でーーす!!」


風呂から上がって、オープンコンペのパーティーが行われるレストランに上がっていくと、彼女が廊下の片隅でケータイでメールを打っている。
パーティーの行われる席へと彼女を誘うと、「今、友達にベストスコア更新したって、メールを打ってるんです」と嬉しそうに言う。
先に席に着いて彼女の様子を見ていると、嬉しそうにメールを打っていた彼女が、急に「あ...」と声を出した。

やがて席にやってきた彼女...
「長いつきあいの友達に、ベストスコアが出た!ってメールしたんですよ。」
「そしたら彼女、今週結婚するって返事を返してきたんです。」

んん。

...ベストスコアの女の幸せ、結婚する女の幸せ。



「大丈夫、貴女は十分魅力的ですよ。」じゃ、励ましにも慰めにもならないか...

勿論そんなこと言わなかったけど。

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俺はゴルフってのが大嫌いだった。
自分で(はじめは嫌々)始めるまでは、あんなモノは普通にスポーツをやっていた人間にはチャンちゃらおかしい棒振りダンスだと思っていた。
いい年をした人間が、おかしな格好をして歯の浮く様なお世辞を言い合い、下らない上流階級気取りのこまごまとしたマナーやらルールやらを押し付けて....

しかし、始めてみたら違っていた。

ゴルフというものにハマっちまった人達には、俺と同じように始めてみるまでは「ゴルフなんか大っ嫌い!あんなものやる奴の気が知れん!」なんて人が多い。
そんな男の一人の話。

ある山岳雑誌の編集をしていたTさん。
現役で山や岩をガンガンやっていて、ロッククライマーとしても名が知られていた男。
まあ、ちょっと見でも、髪の毛は短い角刈りだし、体型も首が太くがっちりとしていかにも「硬派の山男」丸出しの風貌だった。
そんな男がひょんな事からゴルフをやることになった。
まあ、周りからも「一度くらいやってみたら...それで嫌だったらやらなきゃいいんだから」なんて相当言われたらしい。

で、非常に不本意だったが...やってみた。

驚いた...
「違うじゃない!」
「これはそんなチャライゲームじゃない!」

それから彼は周りも唖然とするくらい、熱心にゴルフをやるようになった。
...ハマったのだ。
会員権も買った、ホールインワンまでして、その祝賀パーティーまでやった。
多分その頃は、ずっと続けていた毎年の山行よりもゴルフ場に行った回数の方が多かったんじゃないか。
どうしても、それまでのハードなロッククライマーのイメージと合わなかったので、聞いてみたことがあった。
「何でそんなに強烈にハマってしまったんです?」。

「いや、ゴルフを馬鹿にしていたんだけれど、やってみるとこれはロッククライミングと同じだ、って感じたんだ。」

「まず、スタート地点から頂上(目的地)まで、その日の自分の調子、岩の調子、自然条件、なんかを考えながらルートを設定する。」

「それから、どうやってその場所にたどり着けるかをその日の調子によって柔軟に対応して、切り抜ける」

「なにより自然が相手だから、同じコースに何回行っても全く同じ条件には2度とならないから、常に新鮮だし常に違う条件に対応する能力が必要になる。」

「そして、審判が居ないのだから、常に自分に対して厳しくなければならない。」


「だから、ゴルフは面白い...ああ、もっと早く気がつけば良かった!」...

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Kさんは、一人で参加したT県でのオープンコンペで出会ったゴルファーだった。

そのときは私の組は、全員一人参加の4人で組まされていた。
30代の人が一人と、40代が一人、それに私と、その70代後半の年齢と思われるKさん。
7月の少し暑さが厳しいけれど、良く晴れた平日のゴルフ場。
30代40代の二人は、あちこちボールを曲げながらもピンをまっすぐ見て懸命なプレーを続ける。
私は相変わらず大叩きしたりバーディー獲ったりのお祭りゴルフ。
パーだのボギーだのと騒ぎながらのプレーを楽しんでいた。

そんな中で、一人Kさんは静かにマイペースでプレーを続ける。
そして、プレーの合間に何度も青空を眩しそうに見上げる...ボールの行方はあまり気にしていない。
少しして、ふっとため息をついてまた自分のプレーに戻る

昼休みには、それぞれがオープンコンペにどんな風に参加しているか、なんて話題になる。
どの人もゴルフが好きで、余裕は無いもののそれぞれ時間と金の都合をつけては一人でもこうしたコンペに参加している「ゴルフ馬鹿」であると判リ、ますます盛り上がる。
そして、私を始め30代40代の二人ともが、時々奥さんと一緒にオープンコンペに参加したりもするという話になった。
途中で夫婦喧嘩をした人とか、奥さんの方が上手いと言う人まで居たりして...
その話の流れで一人が、それまで会話を静かに聞いていたKさんに「奥様はゴルフをなさらないんですか?」と聞いた。
...

しばしの沈黙の後...「私の家内は暫く前から寝たきりになってしまいまして..」

「あ、すみません! 失礼なこと聞いてしまいまして!」
「いえ、いいんですよ。」
「ずっと私が面倒見ているんですが、週に一回介護の人に来てもらえるので、私はこうして一人でいつでも参加できるようなオープンコンペに出ているんです。」
「家内が元気な頃は一緒にゴルフもずいぶんやりました。」
「...家内は結構上手かったんですが...」


Kさんは誰も何も言えない沈黙の後で、小さな声で独り言のように言った。

「私思うんですよ。」
「男の一番の幸せっていうのは、70過ぎて夫婦で一緒にゴルフ出来ることなんじゃないでしょうか。」

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