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Kさんは、一人で参加したT県でのオープンコンペで出会ったゴルファーだった。

そのときは私の組は、全員一人参加の4人で組まされていた。
30代の人が一人と、40代が一人、それに私と、その70代後半の年齢と思われるKさん。
7月の少し暑さが厳しいけれど、良く晴れた平日のゴルフ場。
30代40代の二人は、あちこちボールを曲げながらもピンをまっすぐ見て懸命なプレーを続ける。
私は相変わらず大叩きしたりバーディー獲ったりのお祭りゴルフ。
パーだのボギーだのと騒ぎながらのプレーを楽しんでいた。

そんな中で、一人Kさんは静かにマイペースでプレーを続ける。
そして、プレーの合間に何度も青空を眩しそうに見上げる...ボールの行方はあまり気にしていない。
少しして、ふっとため息をついてまた自分のプレーに戻る

昼休みには、それぞれがオープンコンペにどんな風に参加しているか、なんて話題になる。
どの人もゴルフが好きで、余裕は無いもののそれぞれ時間と金の都合をつけては一人でもこうしたコンペに参加している「ゴルフ馬鹿」であると判リ、ますます盛り上がる。
そして、私を始め30代40代の二人ともが、時々奥さんと一緒にオープンコンペに参加したりもするという話になった。
途中で夫婦喧嘩をした人とか、奥さんの方が上手いと言う人まで居たりして...
その話の流れで一人が、それまで会話を静かに聞いていたKさんに「奥様はゴルフをなさらないんですか?」と聞いた。
...

しばしの沈黙の後...「私の家内は暫く前から寝たきりになってしまいまして..」

「あ、すみません! 失礼なこと聞いてしまいまして!」
「いえ、いいんですよ。」
「ずっと私が面倒見ているんですが、週に一回介護の人に来てもらえるので、私はこうして一人でいつでも参加できるようなオープンコンペに出ているんです。」
「家内が元気な頃は一緒にゴルフもずいぶんやりました。」
「...家内は結構上手かったんですが...」


Kさんは誰も何も言えない沈黙の後で、小さな声で独り言のように言った。

「私思うんですよ。」
「男の一番の幸せっていうのは、70過ぎて夫婦で一緒にゴルフ出来ることなんじゃないでしょうか。」