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その近辺に行った時には、必ず立ち寄る喫茶店がある。
そこにいる50年配の独身のマスターはゴルフ好きでギャンブル好き...結構ハンサムだし、ゴルフも上手い。
もう20年以上前からのゴルフ仲間で、昔は一緒にオープンコンペに出て楽しんだりもした。
共に「昭和的」なゴルフの技にこだわり、オープンコンペで出会った「偉そうで 嫌な上級者」を、一緒に「グーの音も出ない程凹ます」のを無情の楽しみにしていた時期があった。

彼の喫茶店は、周りにある会社勤めのサラリーマンが主な客のために、平日に休むことが出来ずに土、日が休み。
...安くなったとはいえ、やはり土日のプレーフィーは平日の倍ほどかかる。
おまけに巡り合わせで土日に天気の悪い日が続いたりすると、彼のゴルフは二ヶ月に一回とか三ヶ月に一回とかになることがしばしば。
彼とは年一回ペースでゴルフをやっているけれど、時にフックボールでミスをしながらも80台前半では回ってくる。
飛ばしにこだわりがあって、ティーショットはフルスイングしなければ気が済まないと言う頑固さも持っている。

そんな彼はここ数年、以前から痛めていた肘の調子が思わしくなく、その箇所が喫茶店の仕事にも影響が出る程悪くなっている為に、ラウンド数が極端に減っている。
そんな、満足にスイング出来ない様な身体になっていてもゴルフ雑誌は毎週買っていて、ゴルフ界の最先端の情報をよく知っている。
新しいギアのことにも非常に詳しい。

彼のもう一つの趣味が競馬。
結構当てるのが上手いらしく、穴狙いでそこそこ当てていると言う噂を聞く。
そして、その当たった金はゴルフのギアにつぎ込む。
最新情報に詳しいから、シャフトやヘッドも俺の全く知らないような評判の良い新製品を選んで、アイアンもウッドも買い変えてしまう。

コーヒーを飲みに行くと、彼とはゴルフの話ばかり。
(実際のラウンドには行けてないのに)新しく買ったドライバーがどのくらい良いか、ユーティリティークラブがどうだとか、パターが以前のとどう違うか、から始まって。
「ロングアイアンが使えなくちゃゴルファーじゃない」し、「ボールをバシッと叩き切らなきゃゴルフはつまらない」とか、「アプローチはカップ際でギュンと止めなきゃ美しくない」とか。
...そんな話を1時間も2時間も。

そんなマスターが去年実際にラウンドしたのは4回程。
今年は、まだ2回しかしていない。
その最近の2ラウンドは、いずれも途中でのラウンド中止だった。
なんとか痛みをこらえてスタートしても、ハーフくらいで肘の痛みがどうしようもなく強くなり、プレー続行不可能となってしまうのだ。
 
「もっと軽く振れば良いじゃない」とか、「もっと柔らかいシャフトで肘の負担を減らせば?」とかのアドバイスは全く聞かない...「それじゃあ、ゴルフじゃない!」って。

肘は手術をしなければ治らないと医者に言われているそうだ。
「なんで手術して完全に治さないの?」
「この店一人でやっているから、手術すると一ヶ月は手が使えなくなるので無理。」
「いつかは良くなると思ってる。」
仕事中でも時々「イテッ!」と言う表情を見せながら、彼はまた来る素晴らしいゴルフシーズンに、昔の様なボールを打つ事を夢見て、新しいゴルフ情報を真面目に仕入れている。





「今度、馬が当たったら...」