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オープンコンペに一人で参加、ということになると、一番回りやすいのが一人で参加した人達同士で一組になること。
一番回りにくいのは、仲間3人で組んでいる組に入れられてしまうこと。
こうなると殆どの場合、3人が仲間内の話で盛り上がっている場には入っていけない。
当然ラウンド中は3人と一人の2組で回っているような状態になり、大体は存在していないかのように無視されて一日が終わる。
中には気を遣ってくれる人がいたりするけど、会話は当たり障りのないことだけで、結局は一人黙々とラウンドすることになる。
まあ、そんな場合は逆に「スコアで負けるものか!」とか思って、ゴルフに集中できるので結構スコアが良かったりする。

...茨城県のSカントリークラブのオープンコンペで一緒になった3人組は、ちょっと雰囲気が違っていた。
スタート前に挨拶したときに、60年配の男3人組と一緒と判って、「ああ、今日は外れか..」なんて内心思っていたんだけれど、一人が側に来て「今日はご迷惑賭けると思いますが、よろしく」と挨拶してきた。
不思議なのは、少し後でもう一人が「すみませんねえ。今日は一つよろしく」といずれも、近くでこっそり、という感じで挨拶してきたこと。
二人は恰幅も良く、ドライバーの素振りをしたり屈伸をしたりしているが、残る一人は5ー6才ほど年上と思われる、痩せこけた身体で空を見上げているだけだった。
そして「俺はもう、ドライバー100ヤードしか飛ばねんだよなあ」なんてぼやいている。

ラウンドが始まると、相変わらずドライバーがとっちらかる俺は、一人隣のホールに行ったり山の上に行ったり...ドライバーが飛ばないと言った痩せた男は、本当にスローモーションの様なスイングで100ヤードがやっとという飛距離、でも曲がらずにフェアウェイセンターに打っていく。
その時不思議に思ったのは、カートのセルフプレーなのだが、挨拶してくれた二人の男がまるで痩せた男のキャディーのように、クラブを持って行ったり、カートを回したりして動き回っていること。
痩せた男がゆっくりとボールのあるところまで行くと、一人の男が自分のと痩せた男のとの二人分のクラブを10本以上持って走ってくる。
男がポーンとアイアンで数十ヤードを打つと、もう一人りがすぐ側までカートを持ってきて、すぐに自分のボールの所までクラブを担いで走って行く。

昼のレストランで陽気に相手のゴルフの悪口を言い合う3人は、同い年でもう30年以上の付き合いなんだという。
そしてゴルフに熱中したときに、3人は永久スクラッチで握ると約束したんだそうだ。
痩せた男が「いやあ、病気をしてから飛ばなくなってねえ...こいつらは鬼のように俺からチョコレートを獲るんだよ」なんて言うと、他の二人が「なに言ってるんだって! 今まで俺たちからどのくらい勝ってると思ってるんだよ」「家一軒じゃ、きかねえべ!」「うそつけ!俺の方が負けてるんでねえかよ」なんとも気心が知れた仲間同士という会話が弾む。
痩せた男は以前は飛ばし屋で、ハンデは3人の中で一番良くなったという。
でも、「ハンデをやる」という男に対して、他の二人は「永久スクラッチ」で約束したから「絶対にハンデはいらねえ!」という付き合いを通してきたんだそうだ。
ただ黙って聞いている俺は、彼らの話に「次の時には...」「次のゴルフは...」「次の...」と「次の」という言葉が多いなあ、なんて感じていた。

午後のラウンドも、やはり3人は漫才のようにやりとりをしながら、そして二人は痩せた男に気を遣いながら回っているように見えた。
あと2−3ホールというところになると、痩せた男は明らかに疲れ切ったように見えて、それまで飛ばないながらもきちんと当てていたショットが、トップしたりダフッたりするようになってきた。
最終ホールのグリーンに上がるときには、パターを杖のように使ってやっとの事で歩いている、と言う様子だった。
「なんだ、これ入れても俺の負けか!」「今まで勝ってたのを、少しは返してもらわなくちゃなあ」「そうだ、悔しかったら次に取り返せや」なんて笑いながら楽しそうにホールアウトする。
「まあ、永久スクラッチなんだから、今日負けたのが悔しけりゃあ、次はいつでも相手になるさ」
「おう、俺も今日は勝たせてもらったから、次はいつでも受けて立つさ」
「そうだな、次は負けねえからな...」

立ち入ったことや詳しい話は、なにも聞いていない。
残念ながら誰も入賞できなかったパーティーが終わった後、帰り際に最初に挨拶してくれた男が「今日は、本当にご迷惑かけました」と言って握手を求めてきた。


驚く程強く手を握ってきた彼の目は、真っ赤に充血していた。