ゴルフな人々    (イラストレーター渡辺隆司のブログ)

ゴルフが人生に似てるのか、人生がゴルフに似てるのか... 忘れ得ぬ、ゴルフで出会った人々。

カテゴリ: ゴルフな人々

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ある競技で一緒になったYさんは、一打一打を真剣にプレーする真面目なゴルファーだった。
礼儀正しく、ルールもマナーも良く知っていて、会話も楽しかった。

...ただ、スイングはぎこちなく、身体の硬さを思わせる小さなスイングアークとあまりリズム感のないスイングが、丁度映画の「ロボコップ」の動きを思い出させて、同伴競技者同士が思わず顔を見合わせて笑ってしまうほどだった。
でもYさんは、気にする事もなく淡々と真面目なプレーを続ける。
スコア的には、その組の誰もが「もうひとつ」という結果で、それほど差のつかない平凡な成績で終わってしまったが、記憶に残るような出来事はプレー後の風呂の脱衣所で起きた...

夏の終わりの頃で、皆が半袖でプレーしているのにYさんだけは長袖を着ていた。
そのYさんが、長袖のシャツを脱いだところで、隣にいた自分や周りの人が「えっ?」と驚く。
シャツの下には、流行の機能下着...それはわかる。
が、その上に右肩から肩用のサポーター、両肘に柔らかい肘用サポーター、さらに右腕に柔らかいゴムのサポーター、左手のグローブの下に親指を保護するサポーター、さらに右腕と左腕に何やら身体の機能とかバランスを高めるという宣伝をしている腕輪がひとずつ...

さらに腹には薄い大きな腹巻きと、その上にギュッと締め付けている磁石付きの大きな腰痛ベルト!

そして、ズボンを脱ぐと下にはやはり膝関節まで締め付けて機能するという機能下着に、両膝に膝痛用の締め付けサポーター、ふくらはぎにゴムのサポーター、さらに左足首に関節用のサポーター...

...そりゃあ、これだけ着けていれば動きだって「ロボコップ」になるでしょうよ。
唖然としている我々をよそに、Yさんは平然とした顔でそれらの装具を外して裸になる。
脱衣カゴはそれらの外した装具で山盛りになっている...

湯船で話をして聞いたところでは、Yさんはゴルフにともかく熱中していて、時間が許す限りほぼ毎日練習していて、練習に行くといつまでも球を打ち続ける...球数にして少なくても一日300球は打つのだと...
スコアとしては成果が出ているとは言えないけれど、ともかく毎日球を打つのが楽しくてしょうがないのだそうだ。
でも、その結果として(練習のやり過ぎで)腰痛と、右肩痛と、両肘の痛みと右肘の腱鞘炎と、両膝の痛みと、ふくらはぎの痛みと、左足首がいつも捻挫しているような状態なのと...本当は首も軽いむち打ち状態になっているのだと。
医者に行っても、医者は「ゴルフの練習をしばらく休むしかない」としか言わないので、最近は行ってないんだとか。

「やっぱりゴルフが好きなんで、練習もラウンドも休むなんてもったいなくて...」
その痛みを軽くするために色々試しているうちに、こんな状態になってしまったんだとか。
「首の痛みを固定するサポーターを使うと、スイング出来なくなるんで首にははめてませんけどね」
「少し休んで治してから、ゆっくりゴルフ再開するようにした方がいいんじゃないですか?」
「とんでもない! 半年とか一年とか、ゴルフをやれないんなら死んだ方がましです。」
...この日のラウンドの後も、練習場に寄ってから帰るんだそうだ。

自分もゴルフを始めた頃にはそんな気持ちもあったけど、今はとてもそんな「燃える情熱」なんてありゃしない。
あちこち痛める度に練習場から遠ざかってるし。
最近じゃ、「ラウンドしたいから練習しない」なんて状態だ。

でもなあ...
こういう「ロボコップ」みたいな人って、結構多いのかもしれない。
だって...暑い日も寒い日も、雨の日も風の日も、台風の大嵐の時だって、クローズしてなきゃ練習場には打っている人が絶対にいるものねえ。


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ゴルフというのは、時間がかかるスポーツだとSさんは思っている。
普通のスポーツは、長いと思われるサッカーや野球だって3時間もかからないだろう。
それなのにゴルフときたら、一日がかりとか半日かけてとかいう単位が普通なんだからともかく長い。

Sさんが最初にラウンドした時には、朝6時に朝食をとってから9時スタート、11時半過ぎにハーフが終わる前にお腹がすいて貧血で倒れてしまった。

だから、Sさんは食べる。
スタート前にコンビニですぐに食べる朝食用の弁当のほかに、おにぎり、饅頭、ビスケット、餅、飴、チョコレート、バナナなどを買い込んでおく。
そして、それらを1ホール終わるごとに食べる。
まずは飴やチョコレート、つぎにビスケットや饅頭、そしてバナナ...

勿論、昼食はちゃんとしたご飯ものを食べる。
そして午後のハーフ。
お菓子類を食べた後、残った饅頭やお餅を食べる...16番からの3ホールには、取って置いた長持ちする赤飯や梅干しのおにぎりでお腹をしっかりと落ち着かせてから、気合いを入れてプレーする。
おかげで18ホール、気力が途切れる事もなく少しずつ結果が出て来ている。

が、小さな事だけど問題も出て来てしまった。
他のみんなはラウンド後に風呂場で体重計に乗って、「今日は2キロも減ってる!」とか「汗かいたから3キロも減ってる」とか言っているのに...自分はいつも1〜2キロ増えているのだ。
その体重は、次のゴルフまで日にちがあいていれば元に戻るんだけど、毎週のようにラウンドしたりすると確実に増えて行く。

現実にゴルフを始めてから5年で8キロ増えている。
でも、ゴルフをプレーしているときは何かを食べながらでなくては、貧血を起こしそうで不安で楽しめない。
Sさんは、悩んでいる...「食べなくてはゴルフ出来ないし...」
「ゴルフすると太るっていうのは自分だけかしら」


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Iさんは、私よりずっと年上の、いわば人生の成功者と言えるような人だった。
特に親しい訳ではなく、仕事の関係で数回お会いし、話をお聞きした程度の付き合いだった。

ゴルフが大好きで、その頃はもう現役の仕事はリタイアしてゴルフ三昧の日々を送っていた。
仕事は後の者に譲り、自分は日本に限らずアメリカやイギリスの著名なコースの制覇を残りの人生の目標にしていて、何とも羨ましい生活だった。

話をすれば彼のゴルフ話は多岐に渡っておもしろおかしく、ゴルフに対する蘊蓄も半端なものではなく、雄弁に語るその語り口も楽しいものだった...しかし、彼のゴルフ話の最後に必ず言うのが...
「私はね、コースで死にたいんですよ。」
「畳の上やベッドの上で死ぬなんて絶対にいやです」
「私は、ゴルフをやりながら、とあるグリーン上でバッタッリ倒れてさようなら...それがいいんです」
「だから、その確率を少しでも高めようと、出来る限りコースにいるようにしているんです」

一番いい時にはシングルハンデで、それなりにいい成績も残したようだったけれど、その頃はスコアもつけずに毎日の散歩のようにラウンドしているんだとか。
楽しそうなゴルフ話で、恵まれた生活で、ずっと持ち続けているゴルフに対する情熱も冷めないで...でも、最後の話を聞くと自分の死に場所をゴルフ場に決めている...「最後の望みはコースで死ぬこと」

そんな彼が亡くなったとの知らせを聞いた時に、まず思ったのが「望み通りになったんだろうか?」

それほど親しい付き合いではなかった私が、その辺の状況を聞くことが出来たのは、それから半年経ってからのこと。
「最後はどんな風に?」
「家族みんなに看取られて、穏やかに逝かれたそうです」
「病院でですか?」
「ええ、朝に家で倒れて、入院していたとか...」
「その日、ゴルフ場に行くつもりだったみたいですよ」

Iさんの最後の望みは叶わなかったか...

...残念だったですね、Iさん。
でも家族に囲まれての最後だったら、悪く無いんじゃない?


...きっとそのとき、貴方は家族の顔よりもコースの風景を見ていたんでしょうけれど...

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気温はいったい何度くらいなんだろう。

下界では36度くらいと言っていたけれど、この低い山の中のゴルフ場はいったい何度になるんだろう。
しくじった。
日傘を忘れてしまった。

朝から2度も日焼け止めを塗り、UVカットの下着やシャツを着て、両手にグローブをつけて、つばの広い帽子をかぶり、サングラスをして...完璧だと思ったのに...日傘を忘れた。
せっかくネットで見つけて取り寄せた、軽くてUVカット、紫外線遮断率99パーセントなんてやつだったのに。

ゴルフをするたびに目に見えてシミが増えるのに気がついて、もう若くはない自分を認めざるを得なくなった。
つい最近まで自分の味方だと思っていた夏の太陽が、自分を老化させようとしている敵だって事にやっと気がついた。
つい最近まで、夏に半袖にならないオバサン達を笑っていた。
つい最近まで、夏にスカートをはかないオバサン達を馬鹿にしていた。

悪かったと思っている...若さは馬鹿さだったって。
紫外線の恐怖を自分の肌で知ってから、自分はオバサンだと開き直って、真夏でも長袖、パンツのオバサンルックを徹底しようと決めた。
馬鹿にされても、真っ白になるくらい日焼け止めを塗って、暑くったって肌は見せない。

本当は夏のゴルフなんてやらなければいいのに、生き甲斐がゴルフなんだからそれは論外。
で、こうして炎天下でもゴルフをしに来てる訳。
...ああ、日傘を忘れてしまった。

カートは遠い。

日向にあるボールは、眩しく白く光っていて、目に痛い。
たどり着いた木陰は砂漠のオアシス。
この木蔭から出てボールを打つことは、一大決心がいる大冒険。

打ったらすぐに逃げなくちゃ。
あの日の光の下から逃げなくちゃ。

カートが迎えに来てくれたら、急いで走ってすぐに逃げ込まなくちゃ...

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「なんでこんなにゴルフで辛い思いをしなければならないんだ。」
Yさんは、ここの所ずっと楽しくゴルフをすることが出来ない。

YさんとWさんは、20年ほど前にほぼ同時にゴルフを始めた。
仕事は違うけれど年は一つWさんが上で、住んでいる地域の草野球のチームで知り合った。
チームの中で若く運動神経も良かった二人は、Yさんがピッチャー、Wさんがキャッチャーでコンビを組み、チームを地区の4部から1部まで引き上げた。
そんな草野球もだんだん参加者が減ってきて活動が出来なくなり、その頃一般的になって来たゴルフに転向する人が多くなった。
YさんとWさんも、そんな人に誘われて同時にゴルフを始めた。

始めるとすぐに二人とも熱中し、運動神経の良さもあって同じように上達していった。
そして二人で平均して100を切るかというくらいになった時に「永久スクラッチ」でニギることを約束した。
「半年に一回勝負して、負ければプレーフィの全額と1万円払う」という条件。
勿論永久スクラッチでニギるくらいだから、勝負は拮抗していつも1打か2打差で決着し、勝敗も勝ったり負けたりのほぼ互角の勝負だった。
その半年に一度の勝負のために、練習し、クラブを換え、健康に気をつけ...それぞれが入会したクラブの競技より真剣になったほどだった...そして、帰ってからの居酒屋での一杯は(飲み代は勝った方が、せしめた1万円で払う)「本当にゴルフを始めて良かった」と思わせてくれるものだった。

...それが数年前から、変わってしまった。
大手の会社に勤めていたWさんが、リストラされたらしいと風の噂に聞いた。
(草野球をやっていた頃の近所付き合いの出来た借家から、それぞれ家を買って離れた場所に引っ越してしまった二人は、半年に一度会う以外の付き合いはなくなっていた。 なので、Wさんの個人的な事情は全く判らなかった...会った時はゴルフの話ばかりだったし。)
...そして別の噂では、離婚したとも、再就職に苦労しているとも...

ゴルフが勝負にならなくなった...
今は8のハンデを持つYさんに対し、以前はいい勝負をしていたWさんは100以上を叩いてしまう。
クラブもずっと変わらないし、練習もラウンドもしていないのが判るような初歩的なミスを繰り返す...
スクラッチで勝負していると、3ホールで差がついて最終的には15打以上の差が当たり前になる。

「ハンデやろうか?」
「いや、一度永久スクラッチと言ったんだから、永久にスクラッチだ。」
「でも、勝つに決まった勝負なんかつまらねえよ」
「ハンデ改正は、負けたもんが言い出したら考えろよ。負けてる俺がスクラッチだと言ってるんだからスクラッチだ。」

そういう男だった。
しかし、半年に一回といっても年に2回、負ければプレーフィで二人分の4万に宴会代の1万を百パーセント勝てる相手に払わせ続けるのは苦痛でしょうがなかった。
苦労しているであろうWさんにとってこの対戦が唯一の楽しみであるにしたって、せめて勝ち負けが判らない程度のハンデをつければYさんだってこんなに苦しい思いをせずに楽しめるのに...
もうYさんには、Wさんとの半年に一度の勝負がちっとも楽しくはなく、苦痛だった。
4年間、8回続けて楽勝してしまったYさんは、Wさんに
「今日の差の8割をハンデにしなければ、Yさんとのこの勝負はやめる」
と宣言した。

「お前は男が一度約束した事を、一方的に破るのか!」
「俺はお前と5分の勝負がしたいんだ、勝つと判った勝負はちっとも楽しくない!」
 「お前は俺を馬鹿にするのか!」

喧嘩になってしまった。
今年の勝負の約束は流れた。
Yさんは自分が男の約束を裏切ったことを自覚している。

でも、他にどうしろと言うんだ...
こんな辛いゴルフを、まだずっと続けろというのか?

以前のように、「全力を出して一打を競い合うゴルフを、Wさんとしたい」と、本当に願っているのに。

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Tさんは、ボールをマークしてラインを見る。
「この瞬間が、なんとも言えず好きなんだなあ...」と思う。

Tさんは関西出身の女性。
大学を出てから公務員試験に通り、東京で公務員になった。
その勤務先で大学のゴルフ同好会にいたという女性と同僚になり、付き合いにも必要とわかってなんとなくゴルフを始めることになった。
...そして、間もなくゴルフの魅力に取り憑かれ、熱中した。


(毎日書類とにらめっこの仕事には、土・日と休める時間のゴルフが絶対に必要と感じた。
幸い週2日は必ず休める公務員生活、すぐに「遠いけど面白い」と言う評判のコースに入会し、もう10年以上土・日の2日間コースに通っている。
土曜日の朝、2時間かけてコースに行ってプレーをして、その夜はコースのロッジに泊まり、日曜日に月例なりプライベートなりのラウンドをして帰る。
ハンデは11まで行ったけど、そこで止まっている。
...自分で、こんなもので十分なんて思っているから、これ以上のハンデの更新はないだろう。

5日間の公務員としての生活と、土・日のコースでの日々は充実していて何の不満もない。
コースに行けば、必ず10人以上の仲の良い常連の人達がいて楽しいラウンドが出来るし、月例なんかでは同じクラスに知らない人はいない。
レストランで座る席も大体決まっているし、コースの支配人やプロや研修生、レストランの従業員までまるで家族のような付き合いだし...

今までに好きな人がいない訳でもなかったけれど、ゴルフをやめてまで付き合う気もなかったから、大したドラマにもならなかった。
唯一、コースの常連の一人に熱烈にプロポーズされた時には、困った。
あからさまな好意の表現はコースのメンバー達の評判になってしまったし、いつも同じ組になろうと言うのを無理に断ることも出来なかったので、1年ほど「何時二人は結婚するのか」と賭けの対照にされたりもした。
こちらには公務員を辞めてまで結婚するつもりは全くなかったので、あくまで断り通した結果...彼のコースからの退会でその話題は自然消滅した。

...今では私には、「クールな女」と言う評判が定着している。
確かに、毎週土・日の2日間コースに必ず来て、ショットの結果に関わらずゴルフを楽しもうとしている私は、普通の女性ゴルファーのように喜怒哀楽を大袈裟に表に出してはいない。
でも、本当はどのホールだって、ボールをティーアップする時とボールをマークしてラインを読もうとする時、心の底から熱いものがこみ上げて来て、「飛ばしてやる!」「絶対に入れてやる!」と本気で真剣で情熱的な目つきをしていると思うんだけど。
そうして、その時の熱い自分が本当に正直な自分の姿だと思っているんだけど。


それがわかってくれて、仕事をやめないで済む...そういう男性となら結婚してもいいとTさんは思っている。
ずっと独身でいる、なんて決めた訳じゃ決して無い。

でも、もう40を過ぎてしまったTさんだけど、今の生活を変えるつもりは全くない。

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K氏は、静かに熱く燃えている。
父親が楽しんでいたために、早くから接していたゴルフ。

そこそこ自分でも楽しんでいたんだけれど、なぜか自他ともに認める「飛ばない』「100を切れない」というゴルファーだった。
...確かに飛ばなかったし、スコアもまとまらなかった。
自分はそんなもんなんだと言う諦めが、あった。

でも、それが大きな間違いだった事に最近気がついた!
きっかけはグリップ。
疑いも無く自然に握っていた自分のグリップが酷いウィークグリップだった事を指摘され、違和感一杯でストロンググリップにして打った所...30ヤードも一遍に飛距離が伸びたのだ!

それから、自分のゴルフを改めて見直してみた...何より、今までの思い込みを捨てて謙虚に自分を見直すつもりで。
アドレスが変だった。
ボールの位置も変だった。
腕の変な所に力が入り過ぎている。
右肩が前に出ている。
スタンスが狭過ぎる。
...等々。

グリップを改めてややストロングにしてみると...
トップのフライングエルボーと言われていた右肘が、グリップを変えた事で自然に収まった。
振り抜きの引けてカッコ悪いと言われていた左肘が、自然にたためるようになった。
グリップのおかげでスイングプレーンが、今迄と違って来た。
振り抜きのスピードがが違ってきた。
インパクトの音が違って来た。
フィニッシュが止まるようになった。
...
面白くなった。
あらためて色々なレッスン書を読み、練習場に頻繁に行くようになった。

ゴルフ仲間に、「とてもかなわない」と思っていた飛ばし屋がいる。
知り合いに「とてもかなわない」と思っていた上級者がいる。
いい仲間だけれど、いつも「上から目線」でゴルフを語られていた。
ゴルフの知識じゃ決して負けてはいないのに。
...いい勝負を出来るかもしれない...本気でそう感じた。

インナーマッスルをつける。
体脂肪率を下げる。
柔軟体操、ストレッチを続ける。
基礎体力の向上ならびにウェイトトレーニングも...

今は筋力をつけながらも、4キロの減量に成功した。
飛距離も確実に伸びている。
この次は無理でも、その次かそのまた次か...近いうちに勝負して勝てるかもしれない...飛ばしで、スコアで。
そうしたら、今迄の「上から目線」ではなくて、自分の前で「下から目線」でゴルフを語らせてやるから。
「男子三日会わざれば、刮目して見よ」と言う言葉を、思い知らせてやるから。



...問題は、仕事が忙しくてラウンドする時間がないだけだ。

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ゴルフをするとその人間の本質がわかる、と良く言われているのは知っている。
そうすると私って、獰猛な人間なのかしら。

...小さい時からずっと、他の人と喧嘩するなんて事はまずなかった。
たとえ喧嘩しても、いつも泣かされている方だったし、喧嘩しそうな雰囲気になるだけで逃げてしまったし。
それからずっと...少女時代も、20歳を過ぎてからでも、私は「目立たない」とか「おとなしい」という形容詞をつけられている、小心で穏やかな人間だったはずだ。
自分でも、争いごとを好まず、「みんなと仲良くしていければそれでいい」ってずっと思っているのは変わらない。

それがゴルフを始めたら、周りから言われる事が変わって来てしまった。
「君は獰猛なゴルフをするねえ」
「いやあ、本当に男前なゴルフだ」
「君の本当の性格は獰猛なのかもしれないねえ」
.....
そうなのかしら?
私は争いごとは相変わらず苦手だし、誰かを押しのけていい思いをしようなんて思わない。
「私は端っこでいいよ」なんて言うのが口癖だし、目立つところにいるのは嫌だ。

ただ、勧められて嫌々始めたゴルフは、まぐれ当たりでボールが遠くまで飛ぶのを見てからは、自分の数少ない楽しみのうちで最上位を占める趣味になった。
練習場のゴルフ教室で、レッスンプロに教わって一から覚えて、週一回の練習は欠かさない。

...ただ、私にとってその「ゴルフ」の最高の楽しみは「ボールを遠くへ飛ばす事」だから、(レッスンプロにちゃんと教わったのに)遠くへ飛ばしたくてフライングエルボーのオーバースイングになっちゃったし、「コース攻略の方法」なんていうのも勉強したんだけれど、ピンが見えたらピンに真っすぐ打たないと気が済まない。
せっかく広くて気持ちのよいコースに来たんだから、天に向かって「どこまでも飛んで行け!」とドライバーを打ち、ピンに向かって「ともかく最短距離を」とアイアンを打つ...それしか考えたくない、というのはおかしいだろうか。
(その間に池があっても谷があっても、OBがあっても1ペナがあっても、それを越える事が気持ち良いんだし...)

私の「人見知りをする」、「臆病」で「引っ込み思案」で「目立たない事が好き」で「争いごとは好まないし怖い」という性格は、ちっとも変わっていないんだから、ゴルフを見て私の事を「獰猛だ」なんていうのは間違っていると思うんだけど...

だから、「ゴルフのプレーを見れば、本当の性格がわかる」、なんていうのは間違っている、と私は思っている。
...私は獰猛じゃない。

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「本当に親父か?」
Kさんが、自分の父親のその写真を初めて見つけた時には、ルーペで何度も拡大してみたほどだった。
...父親が、照れくさそうに、でも嬉しそうにカップを抱いている写真。

...そんなはずは...
だって親父は最後まで100を切るか切らないかの腕だったし、ハンデだって15まで行ったかどうか..
自分とやっても何時も10打以上多く叩いていた。

酒もタバコもやらずに、趣味と言えば毎週一回行く練習場と月一回のゴルフだけだったけど、真面目に続けていたのは知っている。
どういう訳でゴルフを始めたのかは知らないが、長くやっている割には極端なオーバースイングとアウトサイドインのスライス打ちは、とうとう治らなかったなあ...
自分がゴルフを始めた時には色々と教えてくれたけど、スコアが親父より良くなってからは何も言わなくなったっけ。
「ボールに触るな」と「プレーを早く」だけは何時も言い続けていたけど。

だから親父のゴルフの自慢話なんて、殆ど聞いたことがない...まして「優勝した」とかなんて話は一度も聞いたことがない...それなのに、出て来たカップを持った親父のモノクロ写真。
気になって、親父のものを捨てられずに仕舞ってある物置を探してみると...一番奥の荷物の下から、ボール箱に入った古いカップが出て来た。
カップは結構大きく、台座には「XXテレビ」と地方テレビ局の名前が掘ってあって、あとはなにも書いてない。

その後テレビ局の広報に聞いてみても、よくわからなかったこのカップの由来が、この前やっと明らかになった。
知っていたのは、親父の古いゴルフ仲間のHさん。
自分があちこちでこの写真の事を聞いて回っている、と言う事を聞きつけて連絡をくれた。

「そのカップは優勝カップじゃないんだよ」
「それ、テレビでやっていた大会のニアピンのカップなんだ」

かなり以前の事、その地方テレビ局の番組で視聴者が一組4人単位で出場して、チームの成績を競う大会を開催した事があったという。
その大会に親父の仲間が応募して、人数あわせに親父も無理矢理出されたんだとか。
チームのホールごとのベストスコアを出せばいいので、下手でも4人目でいれば問題なかったという。

その時にアトラクションとして、全てのパー3ホールにニアピンがあった...これは勿論個人のショットごとの記録だが...そのあるショートホールで、親父の万に一つのスーパーショットが飛び出した...オーバースイングの大き過ぎたアイアンが、テンプラ気味に当たり、あわやホールインワンの30センチに付いたという。
(ホールインワンだったら車一台だったらしい)

この日の親父のナイスショットはこれ一発だけ...でも、チームとしても賞品を貰えたのはこのニアピンだけだったので、しばらくは親父達の仲間内で話題になったという...このとき成績が良かったチームはテレビに映ったらしいが、親父達にはカメラもつかず、テレビに映る事はなかったとか。
ただ、こういうアトラクションで賞を獲った人は、一人一人テレビ局のカメラマンに記念写真を撮ってもらってプレゼントされたんだとか。

謎が解けたこの写真...ひょっとしたら、これが親父のゴルフ人生で一番脚光を浴びたシーンだったのかも。
なんか、親父の表情といい、カップをぎこちなく持つ手といい...微笑ましくて、額にでも入れて飾っておきたい。

いいよなあ、親父のこんな顔は息子の俺もあまり見た事ないような気がするし。
他の人には、ニアピンのだ、なんて言わないでおくからさ。

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問題は山ほどあった。
迷っていた。

Hさんは、所謂「アラフォー」ならぬ「アラフィフティー」の女性...もう50に近いのか、なったのか。
先日、初めてオープンコンペに一人で参加した。
...それは、彼女にとって大変な決心だった。

山ほどある問題は、例えば...お金がない、車が無い、ラウンドは一年振り、練習にも月一度行ってるかどうか、人見知りするのに一人で参加、オープンコンペなんて出た事が無い...等々。
以前、といっても3年くらい前までは練習は週に一回、ラウンドは月に2度くらい行っていた。
ゴルフは初めて10年くらい、趣味と言うか、遊びの中では一番気に入っていた。

しかし、最近身の回りの「山ほどあるゴルフを続けるのが困難な問題」に対して、自分はどう対処すればいいのか。

そこで、自分が本当にゴルフをどのくらい好きなのか、ゴルフをどう思っているのか、オープンコンペというものに出て試してみようと思いついた。
勿論、いいスコアが出るなんてあり得ないし、賞品なんてとんでもない...でも、ここで嫌な思いをしたり、ゴルフを嫌いになるような出来事が起これば、それでキッパリとゴルフをやめられる...本心はそんな所。
探したのはHさんの住んでる私鉄の沿線で、電車賃とプレーフィーなど全部入れても1万円以下で、知り合いのいない初めて行くコース。
...気持ちは、なんだか無謀な大冒険に出る気分。

一緒になったのは、それぞれ一人で来ている五十代から六十代の男性3人。
「ご迷惑をおかけします。」と一応挨拶して言っておいたけど...

3人のうち六十代の一人は上手かった。
あとの五十代の二人は、一応アベレージゴルファーという所だろうか。
自分は一人レディースティーからだけど、緊張と練習不足からチョロや当たり損ねを繰り返し、自己嫌悪と申し訳ない気持ちで落ち込むばかり...ところが、「もうゴルフはやめよう」という気にならない。
...3人の男性が、チョロをそれぞれに励まして慰めてくれる、当たり損ねのボールを一生懸命探してくれる、バンカーで出なくても辛抱強く応援してくれる、パットのラインを自分のラインそっちのけで見てくれる...
六十代の男性は、ゴルフのこぼれ話をおもしろおかしく話してくれる。
自分のプライベートな事には立ち入らずに、なんとか落ち込む自分を楽しくさせようと気を使ってくれるのが感じられる。
五十代の男性達も、自分のミスを大笑いで笑い飛ばし、「ゴルフはスコアよりも楽しいのが一番です」なんて声をかけてくれる。

...スコアは、三桁を軽く越える散々なものだったけれど、「もうゴルフはこれでやめよう」なんて気持ちにはならなかった。
半分自爆するようなつもりで飛び込んだオープンコンペは、思わずほろりとするような暖かさで自分を迎えてくれた。
勿論、いい人達と一緒になった「運」もあったろうけれど、かえってゴルフの素晴らしさ...自分はやっぱりゴルフが好きなんだ、という事を自覚させてくれるものだった。

...おまけにパーティーでは、なんと「飛び賞」の55位で「ケーキ」のお土産まで貰ってしまったし...他の3人は微妙に入賞から外れてしまったのに。

帰りの電車の中では、バッグとケーキを膝に乗せて曝睡してしまった。
多分、アラフィフティーのオバサンのみっともない姿だっただろうなあ、と思う。


...でも、ゴルフのいい夢見ていたんだから...いいんだ。

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